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第181話
夜も更け、空は暗くなったが二人は黙々と作業を続けた。そんな作業も終わりが見え始め、肩をゴキゴキ回しながら二宮が声をかけてくる。
「もう9時じゃん。今日はここまでにしよーぜ」
「え?……あ、はい」
もうそんな時間なのかと、驚いて頷く咲也を見て二宮が笑う。
「本当、優一に似てんな〜。あいつもしょっちゅう仕事しては時間忘れてたし。まぁ、今もだけど」
卒業後も兄との交流を続けている二宮が言うと、咲也は頬を赤くした。
尊敬する兄と似ていると言われるのは悪い気はしなくて、照れる。
「………嫌なことあると余計に仕事に没頭するとこも似てる」
資料ファイルをバタンっと閉じて、意味深に告げる二宮に咲也は視線のみを向ける。
「渉の婚約発表、来月らしいじゃん。行くの?」
「……まぁ、幼馴染みですから」
「へぇ〜。恋人と婚約者が対面って凄くね?」
「別れたんで、ただの幼馴染みとして行きます」
この話を早く切り上げたくて、包み隠さず咲也は淡々と告げた。
その返答に二宮が咲也の頭を撫でた。
「渉のやつお前の手、離したんだ」
茶化すような口調だったが、覗き見た彼の目は怒りが伴っていて、咲也は苦笑した。
「俺が振ったんです。ほら!俺ってば、すぐ心変わりするから」
肩を竦め、自虐的な言葉で笑い飛ばそうとする咲也を二宮は許さなかった。
「心変わりされるぐらいあいつは魅力不足なんだな」
ハンッと咲也の強がりを挑発した二宮は距離を一気に詰めた。
ドンっと壁を叩いて、咲也を腕の中へと覆い込む。
「な、何!?」
いきなり雰囲気を変えた二宮に焦った声を出すと、咲也は優しく頬を撫でられた。
「フリーなら、口説いてもいいよな?」
真顔で顔を近づけられ、咲也は羞恥と驚きに顔を思い切り晒せた。
「ガラ空きだ」
顔を晒せてあらわとなった首筋へ二宮が顔を埋めた。
「ちょっ……!」
噛み付くように肌を吸う二宮に咲也は拳を振り上げる。
「おっと!あぶねぇ!」
ハハッと楽しそうに笑う二宮は顔を真っ赤にして睨みつけてくる咲也へ宣戦布告した。
「俺は優しく口説くなんて生ぬるい真似はしない。一気に攻め落とすから覚悟しとけよ」
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