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第183話

「あ〜……。マジだるっ。しんどっ。もう数字見たくね〜」 ソファへどさりと倒れ込むように寝そべる咲也は相当疲れているようで渉は驚いた。 ここまで疲れ果てる咲也を見たことがない。 「あのさ、次からは連絡してよ」 「あー、うん……」 全く中身の詰まってない返事に渉は溜息を吐く、どう元気付けるべきか咲也へ手を伸ばそうとしたとき、咲也がガバッと体を起こした。 「よし!ご飯食べよう!」 そして、寝る!っと、気合いを入れ直す咲也に渉は手を引っ込めて、代わりに冷蔵庫から炭酸水を持ってきた。 「サンキュー……って、サンドイッチ、多過ぎないか?」 パック詰めになったサンドイッチが8箱入っていて、咲也は驚く。流石にこんなに大食いではない。 「咲也の好みが分かんなかったんじゃないかな?」 内容を見ると全て中身の具が違っていて、綾人なりの配慮なのだろうと、咲也が笑った。 一番好きなたまごサンドを選んで一口食べると、咲也は手を付けていないサンドイッチを渉へ渡した。 「食べれば?」 学食にて夕食を済ませた為、お腹は満たされていたが、付き合い程度にと咲也の向かい側に座って渉はハムとチーズのサンドイッチを選んだ。 お腹が空いていた為、ハイペースで食べ進める咲也に渉は他のサンドイッチも勧める。 何か話そうとするが、何を話せばいいのか分からず、手持ち無沙汰となり、渉は炭酸水を口へと含んだ。 そのとき、少し前屈みとなった咲也の首元へ視線がいき、首筋に出来た赤いアザを見て、渉は口に含んでいた炭酸水をブーーーッと吐き出した。 「うっ、わぁっぁ!!汚っ!!!」 顔面にモロ直撃した吐かれた炭酸水に咲也は発狂した。 「うわっ、うわぁっ!!無理っ!!ヤダヤダヤダヤダッ!!!」 眼鏡を外すと、顔をテーブルの上のティッシュでがむしゃらに拭いて、濡れた制服が気持ち悪いと急いで脱ごうとした。 「ちょ、ちょっと咲也!それ何!!?」 狼狽える咲也に渉は詰め寄って胸ぐらを掴み、襟元をあらわにする。 咲也の右首筋に2つ明らかなキスマークが付いていて、渉は目の前を真っ赤に染めた。 「これ、一体どうしたんだよ!?」 怒鳴り声をあげる渉に一瞬、怯むものの咲也は潔癖症状が発動して、何を聞かれているのか正常に判断できなかった。 「わ、わかんなっ……、ふ、風呂……!シャワー、浴びたいっ、ちょっ……、離して!!」 小さく震えながら、渉を思い切り振り払うと、咲也は一目散にバスルームへと走っていった。 その場に残された渉は込み上がる怒りで頭がおかしくなりそうで、目の前の机を拳で思い切り叩きつけた。

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