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第196話
「咲也!」
急いでやってきた二宮は学校の保健室の扉を乱暴に開いた。
ちょうど、保護者として優一が来ていた所で咲也は青白い顔でベッドの上で起き上がっていた。
隣には咲也を保健室まで運んだ渉もいる。
「容態、どうなんだ?」
友人である優一に聞きながら歩を進める二宮に一緒にいた保険医が答えた。
「主治医の速水先生と連絡を取って確認したところ、潔癖症状の悪化らしい。ストレスからきてるって……。何か思い当たる節はあるか?」
最後は咲也へ向けられた言葉だったが、その問いに眼鏡を掛け直した咲也は小さく首を横へと振った。
「先生。1週間程、こいつのこと自宅通いにしても良いですか?」
「兄様!俺、大丈夫です!!」
「大丈夫じゃないから言ってるんだ。実家が嫌なら俺のマンションから通え。命令だ」
厳しい声で命令と言われた咲也は押し黙る。
幼い頃から兄の命令に背けない咲也はこれ以上口を挟めなかった。
「まあまあ。別に自宅から通ってもらっても支障はないよ。事情が事情だからね」
優一を宥めるように保険医が了承を出すと、手続きを取ってくると保健室から出て行った。
「咲也、大丈夫か?」
目に見えて心配する二宮に咲也は謝罪した。
「心配かけてすみません。変な電話も……」
「何言ってるんだ。電話をくれて嬉しかった」
咲也の側に寄り、近くの椅子へ座ると、二宮は確認する。
「手を握るのはダメか?」
その問いに少し躊躇う咲也だったが、少し考えたあと、そっと自ら二宮の手を握った。
直ぐにその手を握り返す二宮は安心したように微笑む。
そんな二人を見て渉は愕然としたが、優一は驚いたように口を挟んだ。
「なに?お前ら、そんなに仲良かったわけ?」
優一の質問に咲也より早く二宮が嬉しそうに答えた。
「俺達、付き合いだしたんだ」
「えっ!マジ!!?」
優一が素っ頓狂な声を出す横で、渉が身を乗り出した。
「嘘だ!」
血相を変えて飛び掛かってきそうな渉に二宮が口を開いたが、それより先に咲也が言葉を放った。
「嘘じゃない。二宮先輩と付き合うことにしたんだ…」
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