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第200話

何の解決もないまま、渉の婚約発表の日になり、咲也は気慣れないスーツ姿で優一と会場であるホテルへと来ていた。 パーティー会場の部屋はとても広く、立食型で豪華な料理がブッフェで並べられている。 面子も格式高い家柄が集まり、皆、ドレスコードで出席していた。 「あら、優一に咲也!」 このような場に慣れ親しんだ優一がスタッフからドリンクを受け取ったとき、涼しげな声に呼び止められた。振り返るとそこには大輪の金の刺繍を施された白い着物に身を包む渉の母、理恵が幼馴染みの猛と共に立っていた。 「今日は忙しいなか、来てくれてありがとうね〜」 上機嫌で駆け寄り、笑いかけてくる理恵に優一がウエルカムドリンクのシャンパンを掲げる。 「こんばんは、理恵さん。相変わらず綺麗ですね」 「あら、やだ!お世辞が上手」 満更でもない理恵は嬉しそうに笑って優一の肩を叩く。 「今日は綾ちゃんいないの?」 「うん。留守番させてる。そっちこそ、西條は?」 猛の伴侶であるざくろの姿がなく、辺りを見回すと理恵が残念そうに言った。 「ざっちゃん、ついさっきまで来てくれてたんだけど、お仕事でもう行っちゃたわ〜。寂しいたらないわ」 心底悲しそうな理恵にざくろが九流家に可愛がられているのを再確認した優一が安堵に微笑む。 「ところで渉は?」 主役の姿がないと視線を散らせたとき、理恵が深刻な顔で呟いた。 「なんか麗美ちゃんと話があるから2人きりにしてくれって……。こんな日にあの子ったら…」 ブツブツ文句を連ねる理恵に優一が猛へと視線を向ける。その視線に猛は参ったと、困り果てたように首を横へと振った。 「猛、ちょっといいか?」 短く声をかけると、猛は頷いて個室へ案内すると、足を進めた。 咲也も一緒について行こうとしたが、理恵に捕まりその場を離れられなくなってしまった。

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