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第202話
強引過ぎる了承を得た渉はパーティー会場へときた。
煌びやかで大物揃いの来賓。豪華な食事。
これら全てを自分の為に用意されたのに全てをぶち壊そうとしている渉は強烈な胃痛に苛まれる。
逃げ腰になりそうになったとき、会場の隅で咲也を見つけ、渉は喝を入れるようにバチンッと自分の両頬を手の平で叩いた。
「渉!麗美ちゃんは!?」
自分の存在に母の理恵が気付いて意気揚々と走り寄ってきた。
そんな上機嫌な母親の質問に渉はモゴモゴしながら答える。
「その……、あの……、麗美とは別れた」
「………」
息子の言葉に理恵は一瞬フリーズしたが、すぐさま笑顔となる。
「ケンカ?もう!こんな時に何してんのよ!さっさと謝って麗美ちゃん呼んできなさいな」
「……いや、だから別れたんだって」
神妙な顔付きでもう一度同じ言葉を繰り返すと、理恵は目を大きく見開いて大口を開けた。
「あ、あ、あ……」
驚きのあまり言葉が詰まる母に渉は申し訳無さそうに身を縮めた。
そんな息子の頭をガツンと拳で殴りつけ、理恵は小声で怒鳴りつけた。
「あんた!何馬鹿言ってんの!!?今、この場の集まりがどういったものか分かってんの!!?」
「俺の婚約発表…」
ちゃんと理解している息子に理恵は眩暈を起こしてフラつく。
「母さん!大丈夫!?」
母の体を支えようと驚いて手を差し出したが、理恵は怒りに我を取り戻し、息子の腕を捩じり上げた。
渉はその痛みに悲鳴を上げる。
「い、てぇーーー!」
「いい加減にしなさいよっ!ふざけてないで、麗美ちゃんと仲直りしてきなさいっ!!」
鬼の形相で睨みつけられた渉は痛みと恐怖で冷や汗を流しながら硬直する。
「渉?理恵さん?」
格闘的な揉め方をしている二人に心配そうな声をかけてきたのはまさかの咲也だった。
理恵は息子から手を離すと、身嗜みを整えて咲也に泣きつく。
「さくやぁぁ〜、このドアホなんとかしてぇ〜」
咲也へ抱きついておいおい泣く理恵に咲也は首を傾げて渉を見た。
「俺、麗美と別れたから……」
渉の告白に咲也は眼鏡の奥の紅茶色の瞳を見開いた。
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