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第212話

「アホ!バカ!最っ低のド変態っ!!」 朝起きて、咲也は隣で眠る渉をボカスカ殴りつけながら喚いた。 「いてっ、やめっ!ちょっと……、マジで痛いって…」 寝起きにはキツ過ぎるお仕置きに渉は枕を盾に咲也へ謝罪した。 「ごめん、咲也!許して!!」 猫のようにふーふー怒りながら、睨みつけてくる咲也に渉は疑問に思って聞いてみた。 「で?何に怒ってんの?昨日、気持ちよかっただろ?すげぇ、イきまくってたし」 自分も気持ちよかったが、咲也のことも気持ちよくしたくて張り切った自覚がある渉は何にそんな腹を立ててるのか分からなかった。 「お、まえなぁ〜〜〜!!!」 身も蓋もない言葉に羞恥で真っ赤に全身を染めた咲也は近くに転がっているもう一つの枕で渉をバンバン叩いた。 「うわぁ!な、なに?痛かったの!?ごめんってば!!」 「違うっ!バカッ!!っていうか、あんな無理矢理みたいに止めろ!俺、嫌だって言っただろっ!!」 「でも、途中からは脚絡ませてきたじゃん!」 『いやよいやよも好きのうち』かと思ったと渉が真剣に言ってきて、咲也は言葉が出ず、羞恥心で体を震わせると、力任せに渉を思い切り押し飛ばした。 そのままベッドから出ようと足を踏み出したのだが、強烈な腰の痛みに崩れ落ちると、渉が焦ったように身体を起こして支えた。 「大丈夫か!?手加減はしたつもりだったんだけど……」 おかしいなと、不思議そうに呟いて咲也をベッドの上へ戻すと、渉は身体を見せることに恥じらいを持つ咲也にそっと全身をタオルケットで包んでやり、よしよしと紅茶色の髪を撫でた。 「喉渇いてない?それとも風呂?腰が痛いならマッサージするよ?」 「………」 甲斐甲斐しく世話を焼いて甘えさせてくる渉に咲也は喜びや戸惑いよりも気恥ずかしさが先立った。 なにより潔癖な咲也は自分と渉の今の関係性がよく分からなくてモヤモヤした。 最初は幼馴染み。次に恋人。そして再び幼馴染みへと戻る努力をした。 恋人の時は心も身体も距離を詰めていたが、今のこの関係は恋人でもなければ幼馴染みでもない。 何と呼べば良いのだろうか………。 「……咲也?」 考え込む咲也の顔を渉が覗き込むと、咲也は紅茶色の瞳で睨みつけて呟くように聞いた。 「…………俺らってセフレ?」

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