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第44話

「咲也、落ち着け!千堂だけは絶対にやめろ」 低い声で許さないと凄んでくる渉に咲也は無言を貫いた。 ここで咲也を止めなければ確実に千堂の元へ行きそうで渉は苛立ちにギリリと奥歯を噛み締める。 「来い!」 怒鳴るように声を荒げ、咲也の腕を掴んで引き摺るように渉は自分の部屋へと向かった。 部屋に着くなり咲也をベッドへ放り投げると、怒気を孕む黒い瞳で幼馴染みを見据える。 「な、なんだよ!」 不安に揺れる紅茶色の瞳が眼鏡の向こうで動揺していた。 そんな咲也の両手を押さえつけ、上へと覆い被さると渉は低い声で念押しした。 「千堂の所へ行くと言うことはこういうことだぞ?」 黒い瞳が睨みつけてきて、咲也は一瞬臆したが、真っ向から渉を見据えてハッキリと答えた。 「分かってる。あいつに抱かれに行くんだ」 その言葉に渉の頭の中が怒りで真っ赤に染まる。 咲也の腰に馬乗りになり、腕を咲也のネクタイを外させて一纏めに縛ると、胸倉を掴んで力任せに衣服を引き裂いた。 ブチブチブチっと、制服のシャツのボタンが飛び散り、いきなりの暴力に咲也は息を呑む。 「渉!!」 驚きの声を上げる咲也の頬をバシンッと平手打ちすると、眼鏡がカシャンっと吹き飛んで地面へと落ちた。 「黙れ」 凍りつくような渉の冷たい声に咲也は絶句し、身を強張らせた。 怒りを灯す黒い瞳が冷ややかな視線を落としてくる。 こんな渉を咲也は見た事がなかった。 「他の奴に汚されるぐらいなら……」 掠れる声で小さく呟く渉の言葉が聞き取れず咲也が不安な顔を見せた時、渉は自分のネクタイを外して揺れる紅茶色の瞳を覆い隠した。 「今日は手加減なんてしない。耐えられなきゃ、愛しの兄様でも考えてろ」 吐き捨てるように命じると、咲也は何がなんだか分からないまま、それらしい抵抗一つ出来ずに固まっていた。

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