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第47話

「…………おはよう」 「うん」 次の日、教室にて顔を合わせるものの瞬時に目を逸らされ居た堪れない思いで朝の挨拶を渉はした。 咲也はいつも通りの無表情で頷くだけで、手持ち無沙汰に携帯電話を弄り出す。 何か話した方がいいのだろうが、何も言葉が出なくて頭の中をパニックにする渉にクラスメイトが声をかけてきた。 「わったる〜!昨日のドラマ見たー?」 明るく軽快な声に渉の意識がそっちに傾くと、続いて複数のクラスメイト達に取り囲まれた。 アレコレと陽気な話題を振ってくる皆んなに渉は助かったと波に乗って咲也の側を離れ、一息つく。 ガヤガヤといつものように担任が来るまで馬鹿騒ぎをし、教師に席へ着くよう言われてぞろぞろと皆は着席した。 斜め前に座る咲也へ視線を向けると胸がまたざわざわとし始めた。 謝った方がいいのだろうか… 目が覚めてからずっと考えていたが、どうしても謝罪する気持ちになれなくて渉は悶々としていた。 だからといって、あんな強姦まがいな行い許されるわけもない。 朝、咲也に会えばパンチの一つでも食らわされると覚悟していたのに当の本人はいつも通り過ぎて呆気にとられた。 初めて抱いた時のように完全に兄の優一に抱かれたとまた思い込んでいるのだろうか。 そう思うと、ざわざわしていた胸の内がイライラに変わっていった。 「くそっ!!!」 HRということを忘れ、ガンッと両拳で机を打ち付け、悪態吐くと教室内が静寂に包まれ、同時に驚かんばかりの視線を一身に受けた。 「……あ」 しまったと、顔を強張らせると教壇にて苦笑いした担任に注意を受ける。 「九流〜、寝惚けてるのか?サッサッと頭切り替えろよ〜」 「すみません……」 会釈して小さくなるとクラスメイト達に笑って揶揄われ、難なくその場を乗り切ったが、咲也だけが自分を振り返ることもしなければ意識を向けることもなく、虚しさに襲われた。 あいつの中では俺はもう存在しないものになったのかもしれない…… 頭の中にそんな考えが過ぎり、渉はやるせない思いに溜息を漏らした。

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