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第48話
「今日はここまで〜!お疲れ〜」
パソコンの電源を落とし、優一が生徒会業務の終了の声を掛けた。
その声に役員一同、資料やパソコンから顔を上げて一息つくと、体から力を抜く。
「門倉、明日の打ち合わせいいか?」
「あ、無理。綾ちゃんと遊ぶから」
サクサク帰り支度をしながら、幼馴染みの猛の誘いを断る優一に綾人が大きな瞳を半分ほど閉じて鬱陶しそうに口添えした。
「そんな約束してないし、僕は僕で予定入ってるんで九流先輩を優先して下さい」
帰る準備を終えた綾人はそう告げると椅子から立ち上がり、いの一番に部屋から出て行った。
「……だそうだ!これで心置きなく打ち合わせ出来るだろ?」
「……」
あからさまな不機嫌顔で不貞腐れる優一に珍しく咲也は口を挟む事なく速やかに退室していく。
それを横目で見ていた渉は咲也が完全に部屋から出て行くのを確認してから猛と優一に頼んだ。
「たけ兄、ごめん!ゆう兄のこと譲ってくんない?ゆう兄、ちょっと相談乗って欲しいんだ!」
拝むような形で頭を下げてくる渉に猛は無表情だったが、優一はあっさり切り捨ててきた。
「えー。やだ。どうせ、咲也絡みだろ?喧嘩したっぽいけど俺を巻き込むなよな〜」
何も言ってないのに、今日の生徒会室での二人に違和感を感じた優一の的を射た言葉に渉が言葉に詰まる。
好奇心は旺盛だが、面倒ごとは大嫌いな優一なことから断られる可能性は高いと踏んでいたが、咲也絡みということがバレてますます話に乗って貰えそうになく、渉はがっくりと肩を落とした。
それを猛の隣で見ていたざくろが見兼ねて助け船を出してやった。
「門倉先輩。俺、今から綾と約束してたんですけど、渉君の相談にちゃんと乗るなら綾を説得して門倉先輩との時間を作るように言いますよ」
にっこりと笑って魅惑的な提案をしてくるざくろに優一の瞳が輝く。
「よし!渉、来い!俺の時間を30分くれてやる。西條!綾に今日は泊まりに来るように段取りつけさせとけよ」
たった30分に対して対価に見合わない条件を出してくる優一にざくろが苦笑した。
「それは……、綾がさすがに了承するかな?」
無理だと遠回しに断ると、優一の表情が一瞬翳る。
「……なんか、企んでるみたいだから一人にしときたくないんだよね」
ポツリと呟かれた意味深なその言葉にざくろは思い当たる節があるのか、視線を伏せて考え込むと、小さな溜息を吐いたあと、その条件を呑むと頷いた。
「分かりました。綾には俺からそう伝えておきます。だから、渉君の話はちゃんと聞いてあげて下さいね」
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