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第50話
「ん〜……。咲也の失恋は置いといて。俺的には綾は咲也とは切っても切れない縁になるわけだし、早々にキレて猫被りやめさせて喧嘩の一つでもさせたいんだけどな。綾と結婚はしても一応門倉家を継ぐのは念頭に置いてる。でも、綾を理由に出て行けって言われたら悪いけど出て行くから、咲也には迷惑かけるだろうな〜」
その辺のフォローは必要かと呟く優一の中では絶対事項はどうやら、あの白木綾人らしい。
あの悪魔を通り越す程の自分勝手だった大魔王的俺様男はどうやら寝ても覚めても天使を中心に回っているらしく、渉はそんな優一にことごとく変わったなと心から感嘆した。
しかし、そんな優一ならばと渉は口を開く。
「一つだけ助言しとく。ゆう兄が思う以上に咲也は追い詰められてるよ。あの千堂と手を組もうとまで考えてる。そうなると分かるでしょ……?」
咲也の依頼内容次第では愛しの綾人もどうなるか分からないと安易に脅しをかけた時、優一の目が凄まじく冷たいものへと変わった。
「あの馬鹿。そこまで頭、イカれたか?」
「ゆう兄がそうさせてるんだろ!?咲也を止められるのゆう兄以外いないって知ってるだろ!?頼むよ!咲也を……」
「もし、千堂に綾人絡みで依頼なんてしたら咲也とは縁は切る。……場合によっては殺すと伝えておけ」
渉の言葉を遮り、優一がピシャリと言い放った。
有無を言わせぬ威圧感に渉の口が閉ざされる。
何か言いたいのに何を言えばいいのか考えがまとまらない。
咲也の暴挙を止めて欲しいだけなのに、どうやらこの男はそんな生易しい事に手間をかけるつもりはないらしく、相変わらずの冷たさを目の当たりにした。
「……もういい。咲也がどうなっても知らないからな!」
怒りを滾らせ、渉は席から立つと捨て台詞を投げつけて優一の部屋を出ていった。
残された優一はまた一つ悩みが増えたと大きな溜息を漏らし、携帯電話を手繰り寄せて問題の『千堂 薫』へと電話を掛けた。
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