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第215話
「じゃあ、また来週な!」
夕食を済ませて寮の前まで二宮に送ってもらった咲也は大きく頷いて手を振った。
「ありがとうございました」
お礼を告げて別れようとしたとき、寮のエントランスの扉が開いて渉が飛び出してくる。
「渉!?」
驚く咲也を他所に渉は神妙な顔つきで二宮の前に立った。
二宮は最初こそ無表情だったが、鼻で笑ったあと、余裕たっぷりの笑みを浮かべた。
「よぉ!」
片手を上げ、恋敵に挨拶をする二宮。対する渉は眉間に皺を寄せ、睨みつけたあと、頭を下げて大きな声で言った。
「二宮先輩、咲也と別れてください」
お願いしますと、更に深く頭を下げてくる渉に二宮は顔から笑みを消して目を細めた。
「お前さ〜、何様なわけ?」
低く高圧的な声を出す二宮の新しい一面に咲也は目を見開いた。
「本当に咲也を想うならお前が引くべきだろ。大体、お前に指図される覚えはない」
「……勝手言ってるって分かってます。だけど、俺が咲也じゃないと駄目なんです!」
「捨てておいて?」
冷たい声で吐き捨てるように聞く二宮に渉は顔を上げて叫ぶように訂正した。
「捨ててなんてない!」
「じゃあ、何だよ?あの時、本当に咲也が別れたかったと思ってんのか?お前がそう仕向けたんだろ?咲也の優しさにあぐらをかいて楽な道へ逃げる為に咲也を捨てたんだ」
「………」
何も言い返せない渉は視線を落として悔しそうに奥歯を噛み締めた。
「咲也が離れて、惜しくなって、それで急いで婚約破壊。周りの迷惑も考えず、自分のやりたい放題。その後始末は親任せ。いい加減にしろ、ガキ」
「それでも、今後は絶対に咲也を離さないっ!」
「お前の言葉には重みがない」
食らいつくように張る声を二宮は淡々と切り捨てるように説き伏せ、渉の未熟さを責めた。
「お前の絶対には価値がないんだよ」
後悔しても遅いと、冷徹な視線を向けてくる二宮に渉は怖気付いて咲也へ顔を向けた。
「また咲也頼みか?いい加減、咲也に守ってもらうのやめろ」
咲也を巻き込むなと怒りを見せるように怒気を孕んだ声音に渉はどうすればいいのか分からず、その場に佇んだ。
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