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第217話

side 咲也 泣き縋る渉を引き剥がし、咲也は一人になると重く大きな溜息を吐いた。 自分の優柔不断さに辟易して、頭の中の整理が追いつかない。 渉に求められれば、心がざわめき喜びが生まれる。 それと同時に二宮の存在が頭の中に浮かんで罪悪感に苛まれた。 自分が一番辛いときに支えてくれた人を裏切りたくない。 彼を選べば全てが丸くいくのもみえている。 なのに………苦しくて、心が痛いんだ 「はぁーーーー」 天を仰いで、また一つ大きな溜息を吐きながら咲也は薄いフレームの眼鏡を乱暴に外した。 そのまま乱雑にテーブルへ置くと、ソファの上へころりと寝転がる。 もう考えたくない 考えてもし、取り返しの付かない答えが出たら怖いから…… だけど、そうも言ってはいられないのも分かってはいた。 渉はともかく、二宮に対しては誠実でいたい。 これが咲也の本心だ。 二宮さん…… 明朗快活であの兄が親しくするなんてと、中学のときから一目置いていた。 自分自身はあまり関わりはなかったが、兄にへばりついていたから、二宮のことはよく視野に入ってはいた。 兄様一番の俺を笑うでもない。馬鹿にするでもない。 どちらかというと…… 『咲也は一途なんだな』 よく、こんな風に笑って言われていたことを思い出す。 「優しい人なんだよな……」 小さな声で呟くと、咲也は今日の二宮を思い出した。 浮気したことを告げたのに、怒るでもなく、寧ろ慰めるように自分を抱き寄せ、頭を撫でてくれた。 壊物を扱うように優しく髪へキスをして、緊張する自分に紳士的に振る舞い、楽しいデートを提供してくれた。 二宮といると安心した。 優しい空気に包まれて、楽しかった。 そう、まるで……… 「兄様のようで…………」 side 咲也 終わり

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