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第73話
猛と渉は二人で各々の部屋へ戻ろうと分岐点の談話室へ差し掛かった時、良く知る声が言い争う姿に破顔した。
「綾ちゃん!もういい加減に帰ってきなさい!」
「やーだー!もう少しだけ皆んなとゲームするの!」
「もう二時間くらいしてるだろ?いい加減にしろよ!」
「うるさいなぁ。まだ消灯の時間じゃないしいいじゃんか!」
白い頬をぷくりと膨らませ、優一を睨みつけてはまだ部屋へ帰りたくないと駄々を捏ねる綾人にそろそろ戻ってこいと腰に手を当てて踏ん反り返る優一を前に猛が歩を進めながら声を掛けた。
「相変わらず、うるせぇな。もう少し騒がず穏便に事を運べねーのかよ」
幼馴染みの小言に優一はムッと顔を顰めて綾人を指差す。
「綾ちゃんが素直なら幾分マシなんだけどね」
「つーか、咲也は?お前の部屋にいたんだろ?」
「いたけど帰ったよ。風邪引いるみたいで部屋で寝るって」
「風邪!?」
綾人の腕を引いては無理矢理連れ帰ろうとする優一の飄々とした声に渉が身を乗り出し、大きな声をあげた。
「熱は?大丈夫なわけ!?」
心配さからか声を荒げて優一へ詰め寄る渉に猛と綾人が驚いた。
「部屋にいるっぽいし、行けば?」
綾人がポツリと呟くと、渉はそれもそうだと、その場を脱兎のごとく駆け抜けた。
その姿を見た綾人は満足そうな顔でクスクス声を上げて笑った。
「咲也君、愛されてるね!んでもって、ゆーいちはヤキモチ?なんだかんだ言って、弟が奪われるの面白くないって顔してるよ?」
綾人の指摘に優一は眉間に皺を寄せ、白いぷにぷにの綾人の頬を指で摘んだ。
「俺が面白くないって顔になってんのは、綾が部屋に帰って来ないからだ!ほら、帰るぞ」
フンッと鼻を鳴らすと優一は綾人の首根っこを掴んで引き摺るように帰って行った。
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