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第76話

「んっ、ぁ……」 ソファの上でなし崩しのように渉に襲いかかられた咲也はこれといった抵抗も見せず、されるがまま身を任せた。 するする脱がされていくパジャマも床へと落ち、気が付けば全裸でキッチリと服を着込んでいる渉を視野へいれるや、羞恥に襲われた。 「やっ……」 「何が嫌?」 首筋へ唇を寄せられ、優しい声で訪ねられて咲也は顔を赤くし、渉の意外と分厚い胸板を押し返した。 「なんでお前は服着てて、俺は脱がされてるんだよ」 ぶっきらぼうな物言いだが、照れてる様子の咲也が可愛くて渉は小さく笑うと着ていたトレーナーを脱ぎ捨てた。 「これでいい?」 見慣れぬ幼馴染みの裸体に咲也の赤かった顔を更に赤く染まる。 視線を反らせようと目を泳がせた時、大きな両の掌に顔を押さえ込まれた。 「俺を見て……。咲也はただ俺を見て名前を呼んでくれたら、それだけでいいから」 頼むよ…と、吐息で囁くのと同時に優しいキスをすると、リンゴのように赤い顔がほんの少しだけ首を縦に振るのを感じた。 「ひぃ……、ぁっ、はぁ…っんぁ!」 胸の薄いピンクの飾りを片方は口に含み、もう片方は親指と人差し指で挟んで捏ねると、鼻にかかる少し高めの喘ぎ声が咲也の唇から漏れた。 その声をもっと大きく、快楽に沈むものへ変えたくて渉は空いている手を咲也の下肢へと這わせる。 自身の膝で足を割らせて、中心のほんの少し反応しているものを握り締めた。 「あっ!」 びくんっと、体を跳ねさせ甘い声を上げる咲也に渉は熱い吐息を漏らすと本格的に快感を引き摺り出すように手を動かし始めた。 「んっ、はぁ…アァッ……、やっやっやだぁ!」 追い立てるような手が自分じゃ制御できない快楽を生み、咲也は体を捻って身じろぐとそれを塞ぐように覆いかぶさり顔を覗き込まれる。 「気持ちいい?」 まだまだ余裕たっぷりの渉の顔に悔しくて歯を食いしばり目を逸らすと、自身を握りしめる扱く手を早められた。 「んっ、はっ…アァッ……、は、やぃっ!待って……」 達してしまいそうで潤む紅茶色の瞳を向けると、渉が甘ったるい声で懇願してくる。 「名前、呼んで」 強気だった黒い瞳が弱々しい、いつもの渉を思わせて咲也はほだされる気持ちで口を開く。 「わ……たる…」 名を呼ばれたこれを合図に渉の目が顔が、自分も良く知る九流家次男のような意地の悪い表情へと豹変したのを見て、咲也は新たな幼馴染みの一面を知る事となった。

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