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第85話
side 優一と綾人
このド変態の鬼畜がっ……
ソファベットにて綾人は身を捩り、下肢に忍びよる魔の手を必死に両手で押さえつけては心の中で悪態ついた。
電気を消した時からやたらと優一は身を寄せつけてはキスをしてきたり、頬や頭を撫でてきていた。
セクシャルなものではなかったが、いつそういった方面へ切り替わるか冷や冷やしていた綾人は案の定、渉と咲也が寝静まったであろう今になって優一のやらしい手つきで体を撫で回され始めた。
「……ゆーいちっ!」
背中を向けていたため、背後から抱き締められていたのだが、抗議する為に綾人は首を捻って優一を睨みつけた。
極小の声音で怒鳴るが、その気になっている優一は楽しそうに口元を笑みにするだけで迫りくる手の動きは止めない。
「綾ちゃん、可愛い…」
耳元で小さく囁かれ、ガッチリ押さえていたはずの手がスルリと自身を握りしめられ、綾人は肩を竦めて息を詰めた。
「少し硬くなってる」
くすりと笑われて全身に火が付くような羞恥に包まれた。
もう嫌だと大きく暴れると、待っていましたと言わんばかりに優一が体勢を大きく変えて綾人を組み敷いた。
「ちょっ……!」
「しー。咲也達が起きちゃうよ?」
荒げた声を上げようとした途端、紅茶色の瞳が怪しく揺れて制される。
妖艶な笑みと溢れ返る色香に綾人は目を奪われて、身を固めた。
「いい子にしてて。声、我慢してね」
フフッと意地悪な笑顔で告げられると、一気にズボンと下着を剥ぎ取られ、両足を肩に担がれて足の間に顔を埋められた。
「っ!!」
大胆なポーズを取らされた上に、まさかの行動をとる優一に綾人は半泣きになった。
その顔もまた可愛いと口パクで伝えられ、同時に少し擡げ始めていた中心のものをぱくりと頬張られた。
「うっ……ッ…」
直接的な大きい刺激に腰が跳ねて、漏れそうになる声を綾人は両手で口を塞いだ。
それを目線のみで確認すると、優一は音を立てないように器用に綾人のものを口内で転がしては舌を這わせる。
「ッ!……んっんっ…」
気持ち良すぎて呼吸が荒く乱れ、掌の隙間から苦しそうな声が漏れた。
咲也達が目を覚まさないかが不安で綾人は必死に唇を噛み締める。
焦らすことなく事を終わらせて欲しくて、綾人は蜂蜜色の濡れる瞳を優一へと向けた。
甘く懇願してくるその視線に優一は満足すると、意地悪することなく頭を上下に動かせて甘美な快感を与えていった。
「ぅ…、んっ……、ーーーーッ!!!」
顎を反らせ、昇りつめる綾人の体は小刻みに震えると、優一に先端をチューっと吸い上げられた時、呆気なくパチンっと弾けるように欲望を吐き出した。
「……ん。ご馳走様」
口の中で放ったものをコクンと飲み干すと、皮肉を囁かれ綾人は乱れた呼吸のまま赤い顔で優一を見つめる。
欲を放ったにも関わらず、内に秘める熱が湧き上がったのか、優一に慣らされた綾人の体はこれをきっかけにスイッチが入ってしまったようだ。
疼く体が辛くて、両手を伸ばして抱き着いてくる綾人に優一の理性も揺いだ。
ほんの少しイタズラするだけと思っていたのに、互いに火がついてしまったようだ。
頬擦りしては甘える仕草に愛しさが込み上がる。
「綾……、愛してる」
深く口付けて我慢出来ないと綾人へ覆い被さった時……
ガタンッと、何かが落ちる大きな音が部屋に響いた。
びっくりして毛布を被った二人が顔を上げると、ベッドの端で寝惚け眼を擦る渉がどうやら携帯電話を落としたらしく謝罪をしてきた。
「あ、ごめん!」
その声に綾人は瞬時に脱がされた下着とズボンを履く。そして、優一は体を起こして眠りに付いている咲也を確認すると、渉へ小声で告げた。
「やっぱ、ベッド小さいから部屋に帰るわ。おやすみ」
綾人をひょいと、横抱きにかかえて優一はそそくさと弟の部屋を後にした。
対する綾人は壊れそうになる程、鳴り響く心臓の音をなんとか沈めたくて優一の首に腕を巻きつけ、一刻も早く自分達の部屋へ戻りたいと願った。
side 優一と綾人 終わり
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