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第90話

自分が信じられない…… 咲也は翌朝、自分の隣に寝転がり気持ち良さそうに寝息を立てる幼馴染みを横目に大きな溜息を零した。 渉とはもうこんな関係を断ち切りたいと思っているのに、ダラダラとふしだらなことをしては最終、自分が淫らに強請っていたことを思い出す。 更に、あれだけ兄が好きだと言ってたくせに綾人との情事を目の当たりにしてもただ動揺しただけで傷付きすらしなかった。 実はそのことが何よりのショックで咲也は額を押さえては溜息をまた一つ漏らした。 最近、否応無しに渉に意識を持っていかれる それを認めたくなくて突っ張ってみたものの、こんな意図も簡単に絡め取られて好き放題されるなんて…… 嫌だと言いつつも内心、渉を強く退けられない自分に咲也は自己嫌悪に陥った。 自分は一体、何がしたいのか 誰が好きなのか もう、何が何だか分からなかった。 もし今、白木が兄様と別れたら? また、渉から真剣に好きだと告白されたら? 自分はどう行動に移すのだろうか…… 兄を想えばまだ、胸は傷む。 綾人を想えばモヤモヤする。 渉を想えば…… スースー寝息を立てて眠る渉を見つめ、咲也は眉間に皺を寄せて嫌そうに顔を顰めてベッドを降りた。 ー 好きになりたくない ー これがハッキリとした自分の中の答えだった。

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