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第92話

顔を青くして、渉を見るなり兄から体を離す咲也に綾人は感心した。 「やっぱり、恋人に誤解されるのは嫌なんだ」 目を瞬かせ、渉と咲也を交互に見て笑う綾人に咲也が激昂する。 「恋人じゃないっ!!」 「じゃあ、なんなの?セフレ?二人、ヤることヤッてるんでしょ」 首を傾げて自分達の関係性を追求し、同時に人には知られたくない出来事を口にする綾人に咲也の怒声が轟いた。 「白木!余計なこと言うなっ!!」 顔を真っ赤にして怒鳴る咲也を優一が筆頭に全員驚く。 「なに?そんな情報シェアするほど、二人して俺の知らないとこでいつ仲良くなったの?」 綾人の蜂蜜色の少しパーマがかったふわふわの髪の毛を指先で弄びながら優一が聞くと、咲也は違うと叫んだ。 だが、もう片方の綾人は嬉しそうにはにかむ。 「えへへ〜。この前、咲也君がね……」 頬を緩ませて口を開く綾人に、咲也がぎゃあぎゃあ騒が出す。 「馬鹿!こら、お前何言う気だ!?兄様に余計なこと言ったら承知しないからな!」 「分かってるって!僕、口は堅いから安心してよ〜」 ガバっと抱きついてきては、信用性の低い言葉を放つ綾人へ訝しむ目を向ける咲也を今度は渉が目を見開いた。 あの咲也が綾人に抱き着かれて黙っていることに驚愕したのだ。 「咲也って、綾ちゃんに懐いたってことは優兄との関係認めたってこと?」 ポツリと放たれた渉の言葉に咲也が綾人と兄を交互に見つめた。そして、嫌そうに顔を顰める。 「ない。絶対ない!兄様にこのオカマはやっぱり似合わない」 相変わらずの辛辣な言葉を吐き捨て、綾人を押し返す咲也ではあったが、トゲトゲしさを何故か感じさせない雰囲気にその場にいる全員がニヤニヤした。 悪口を言われた綾人本人すら始終にこにこする始末だ。 こんな感じで桜が満開の今日、猛と優一はこの学園を去っていった。 前編・ 完

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