99 / 222

第99話

「はーい!空いてま〜す」 お菓子の側から離れる気がない綾人は無作法にもその場から返事をした。すると、扉が開き顔を見せたのは渉だった。 「咲也、来てる?」 部屋へと入りお菓子ではなく幼馴染みを探しにきた渉にざくろがクスクス笑って手招きする。 「咲也君はいないけど、門倉先輩の贈り物凄く美味しいから一緒に食べよ?」 にこやかなざくろに誘われて渉は少し悩んだあと、歩を進めてソファへと腰掛けた。 「コーヒーでいい?」 「うん。ありがとう」 出てきたコーヒーは優一が愛用していたもので、渉は一口飲むと美味しいと目を優しく細めた。 「これまた、豪華なお菓子だね。つーか、うまっ!!」 テーブルの上に広げられたお菓子にも手を伸ばし、サクサクのサブレを食べて驚く渉にざくろも共感した。 「ほんっと、お洒落で美味しいよね!」 「ゆう兄のことだから、リサーチが半端ないよね〜。綾ちゃんが喜ぶなら城でも何でも買うって前に豪語してたよ」 アレは本気だよと、ケラケラ笑う渉に綾人は恥ずかしそうに瞳を伏せた。 「綾ちゃん、ゆう兄とは上手くいってるんだね。門倉のおじさんやおばさんとも仲良くなれた?」 「びみょ〜。お祖父さんは完全に許してくれたけど、あの二人はね……」 ハハハと、渇いた笑いを溢して肩を竦める綾人に渉も苦笑した。 「まぁ、大事な跡取り息子だからね。ゆう兄自身がスペック高いからこれでもかってほどの期待があるんだよ。でも、あの咲也も落とせたんだから大丈夫だと思うけど」 パチンっとウインクしては、心強い励ましの言葉を貰って綾人は柔らかな笑みを見せ、ありがとうと呟いた。 「ざっちゃんはざっちゃんで、最近仕事凄いね!大概の雑誌には出てるし、テレビのCMだって三本出てるじゃん!」 話を振られたざくろはほんのり頬を赤らめて照れ笑いをした。 一時はモデル業界を干されて業界を去る事を決意した時期もあった。 だが、周りの励ましと猛の大きな包容力のおかげで立ち上がり、この世界でもう一度息を吹き返すことが出来たのだ。 唯一無二の存在である猛がいて、やりたいと願ったモデル業をさせてもらえているこの今をざくろは本当に幸せで有難いと日々改めて痛感している。 「二人してなんだかんだと従順満帆だよね〜」 チョコにクッキーとお菓子をアレコレ摘んでコーヒーを飲み、一息ついた渉が羨ましそうに二人を眺めてボヤいた。 その言葉に綾人が小首を傾げて聞いてみる。 「咲也君と上手くいってないの?」

ともだちにシェアしよう!