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第100話

単刀直入で斬り込んだ質問に渉は綾人らしいと苦笑すると、素直な意見を返した。 「見込みがない訳ではないんだろうけど、なかなか芯までは落ちてくれないなって……」 「あー……。なんだかんだで咲也君、ゆーいちラブだもんね」 カルピスを飲みながら納得だと笑う綾人は最近、週末にやたらと優一の部屋へと押しかけてくる咲也を思い出した。 自分としては別に構わないのだが、優一はどうやら実の弟がすこぶる邪魔なようでなかなか帰らない咲也に業を煮やしては八つ当たり紛いなことを吹っかけてくるので綾人としては迷惑この上ない。 先週も同じようなことがあり、このお菓子はそのお詫びの機嫌取りなこともちゃんと理解している。 「押してダメなら引いてみな!作戦は?」 ポツンと、ざくろが提案してみると綾人がムッと唇を尖らせた。 「えー!そんなの咲也君が可哀想じゃん!渉君のこと好きなのは見てて確定なんだから、ややこしくなるよ」 咲也贔屓の綾人は義弟にとにかく優しい。 なかなかの仕打ちをされているにも関わらず、咲也が害を被ったりすることを嫌う傾向が強かった。なので、ざくろへ物申すものの、この意見を聞いた渉は満更でもなさそうで…… 「いいね!一回してみようかな」 それもまた恋愛の醍醐味だと笑う渉に綾人は釘を刺す。 「咲也君に嫌われるかもよ」 「好かれる為にするから平気だよ」 「ゆーいちは卑怯だけど、そんな卑怯な手は使わないっ!」 咲也好みのやり方じゃないと主張すると、渉はカチンときたのか、横柄に口火を切った。 「確かに、たけ兄やゆう兄のことは追いかけてる!だけど、俺の最終目標はあの二人を追い抜くことだから!俺は俺のやり方で突き進む!!」 まだまだ子供な渉は綾人の挑発を受け流すことが出来ず、席を立って部屋を飛び出した。 それを見ていたざくろはクスクス声を上げて笑う。 「渉君、なんだかんだいって可愛いね」 見た目が似ている渉の兄である猛を思い浮かべてざくろが微笑んだ。 猛もこの手は絶対に使わない正統派主義者だ。 真っ直ぐ、熱烈なアピールをしては少しでも隙を見せたら掴んで離さないのが彼の兄。 逆に咲也の兄の優一は一癖も二癖もある。 アレコレと策を投じては綾人を混乱させたことも多々あったが、ピュアな天使相手にこの手の類の仕掛けは一度たりともした事はなかった。 それは彼の洞察力と自分に惚れないわけが無いという傲慢かつ自信満々なところからきていた。 二人の背中を近くで見て育ち、憧れを持つ渉ではあったが、着地点はちゃんと『自分』でありたいのだろう。 そこはとても素敵で認めたいものだが、果たしてこの作戦が咲也向きなのかどうなのかは分からないね。と、ざくろは笑った。 綾人は肩を竦めて溜息を吐くと、友人の空になったグラスにレモンティーを注ぐ。 「まぁ、咲也君には荒療治も必要かもね」 吉と出るか凶とでるか、ある意味見ものだと綾人は気を取直して甘いチョコレートを一粒口の中へと放り投げた。

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