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第118話

「よくもまぁ、綾ちゃんは俺の前にこいつらを連れてこれたねぇ〜」 生徒会終了後、渉と二人になるのを避けたくて咲也は綾人に誘われるまま兄の所有するマンションへとやってきた。 高校を卒業後、優一は実家へは戻らずこのマンションの一室を綾人の為に買い取って生活している。 綾人も来年卒業すれば、このマンションへ越してきて2人で生活することが決まっていた。 だからか、部屋は兄好みの黒や白、茶系のシックなものではなく、青や緑、黄色といった明るくポップな印象が目立った。 玄関の下駄箱上には小さな小人の置物やらが置かれていて兄の趣向からかなり外れていて驚きすらあったが、綾人の好みと言われたら納得がいった。 満面の笑顔で皮肉をぶつけては苛立ちを露わにする優一相手に綾人は顔色一つ変えず、一泊二日のお泊まり用鞄をよいしょと、リビングの地面へ置いた。 逆に咲也はおどおどしては兄の顔色を伺い、渉も優一が少し怖いのか心なし顔色が青くて、リビング入り口付近の扉から一歩も動けずにいた。 「あのね〜、今日はね〜……」 空気を読んでわざといつも通り振舞っているのか、はたまた、空気が読めてないのかムッと不機嫌な顔の優一相手に綾人は甘えるようにいつも通り寄り添っていった。 「あれ?ゆーいち、何怒ってんの?っていうか、咲也君達もこっちにおいでよ〜」 おいでおいでと手招きして、咲也達をソファへ呼ぶと、二人は綾人に言われるままぎこちない歩き方で近寄った。 「……失礼します」 咲也が小声で挨拶すると、三人掛け用のソファに浅く腰掛けた。 ならって、渉も会釈と共に咲也の隣へ腰掛ける。 綾人はそのまま優一の隣に座って緊迫する空気の中、笑顔を保っていた。 「お茶でも淹れるね!」 立ち上がろうとした瞬間、インターホンが鳴り、綾人は誰だろうと首を傾げて優一を見た。 「あ!多分、神楽だと思う。今日来るって言ってたから」 「えっ!?二宮さん!!?」 兄の言葉にいち早く反応を示したのはまさかの咲也で、優一を筆頭に皆が目を丸くした。 「なに?神楽先輩と何かあった?」 「いや、別に……」 極力ポーカーフェイスを保つよう心掛けた咲也は唇をギュッと噛み締める。 「神楽先輩、下ネタ多いから苦手だよね〜」 少し違和感を感じさせた咲也に対して、綾人が最もな理由でフォローすると席を立って玄関まで神楽を迎えに行った。

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