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第120話
「ゆーいちが投げたんでしょ!?なんで食べ物投げんの?信じらんない!!ってか、暴力やめてよね!次に暴力振るったら僕、帰るから!!」
蜂蜜色の瞳で睨みつけてキツく優一に言うと、神楽がカラカラ笑った。
「綾ちゃんはホント、いい子だね〜。優一にこんな風に言えるの君ぐらいだよ」
ふふっと意味ありげに囁く神楽の言葉は真実で、固まる咲也と渉はどうしたものかと目を泳がせていた。
「あ、そうだ!今日二人、泊まってくから」
突然思い出したように綾人が優一へ告げる。その台詞に咲也が何故、今伝えるんだと綾人を睨みつけたが綾人は今だから言うんだと視線を向けてきた。
「嫌だ。こいつらを泊める義理はない」
切り捨てるようにすっぱり言い退けて、優一は綾人が持ってきたブラックコーヒーを手に取った。
「じゃあ、僕も泊まらない」
ドーナツの封を開けながら飄々と言う綾人を優一が睨みつける。
「綾が週末泊まるのは約束だろ?」
「ゆーいちが勝手に命令してるだけで僕には従う義理なんてないもん。あっ!このストロベリーのドーナツ食べていい?」
イチゴのチョコがかかったドーナツを指差しながら神楽へ聞く綾人に優一はイラっとしたらしく、そのドーナツを鷲掴むとバクリと頬張った。
大口で食べられたことからドーナツの半分以上が無くなり、綾人が絶叫する。
「あぁーーー!!!」
「……あっま!」
甘いのが苦手な優一は吐きそうだと口元を押さえながらも咀嚼してゴクリと喉を鳴らして飲み込む。
「ひっど!幼稚な嫌がらせしてバッカじゃないの!?」
幼稚と言いながらも相当なダメージを明らかに食らっている綾人に優一は満更でもない様子で食べ掛けのドーナツをヒラヒラとチラつかせた。
「綾ちゃんがちゃんと泊まるってんなら残りのドーナツあげるよ。意地張らずにこっちおいで」
「いらないよ!バーカっ!!」
子供染みた幼稚な意地の張り合いに神楽がまた声をあげて笑っていたが、そのついでに一言付け足した。
「弟達が泊まるなら俺も今日は泊まろうかな。皆んなでワイワイ語ろうぜ」
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