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第121話
「よ!弟!!」
結局、優一のマンションへ全員が泊まることとなり、咲也はお風呂を借りるべく脱衣所へと一人来ていた。
それを見計らった神楽が一人、輪の中を抜け出して咲也を追い掛けてきた。
「な、何だよ!?」
脱衣所へと押しかけてきた神楽に流石に身構える。
神楽はそんな咲也にやらしい笑みを浮かべた。
「今日、俺と同じ部屋で寝る?」
「はぁ!?」
「なんか、生徒会室でのこと忘れられなくて」
グッと距離を詰めて神楽は壁際に咲也を追い込んだ。
腕と腕で咲也を逃さないように挟み込み、上体をゆっくりと近付けていく。
顔と顔の距離が近くなって咲也は顔を思い切り横へと逸らした。
「お前も意識してんだろ?」
「してないっ!」
「しっ!大声出したら三男にバレる」
挑発めいた言葉に大声を出したら、今度はどことなく脅されるような言葉に咲也は口を噤んだ。
「いい子だ……」
フワッと微笑んで囁く神楽は顔を晒して目の前にある咲也の耳へと舌を這わせた。
「ぅっ……」
びくんっと肩を竦めて向き直り、神楽を睨みつける。
その小さな反抗が楽しくて神楽は舌舐めずりすると、片方の手で咲也の顎を掴んで唇を奪った。
「っん!」
舌を食い込ませて口内を蹂躙し、抵抗しようとする腕を一纏めにして頭上で束ね、震える足と足の間に膝を割り込ませていった。
「ぁ……っん、や、やめっ!」
自分を本格的に抑え込んでくる神楽に本気の焦りを感じた咲也はかぶりを振ってキスを逃れた。
が、それで攻めの態勢を崩してもらえるわけもなく、神楽は咲也のものを膝で刺激しながら首筋へ舌を這わせた。
「ま、待てよ!ちょっと!!」
腕を振り払おうと何度も試みるが、圧倒的な力の差に咲也は愕然とした。
足を振り上げようとしても上手に抑え込んでくる体に抵抗は虚しく躱されて、身じろげば身じろぐほど体を侵食してくる神楽に戸惑った。
「抵抗せずに受け入れてみな。気持ちよくしてやるから」
場数を踏んできた神楽の手練手管と余裕が披露され、咲也の体に熱が走った。
丁寧かつ迅速な愛撫に自身が反応していて赤面する。
首筋を甘噛みされて、嫌なはずなのに性感帯を探しだされて変な気持ちへと促されいった。
「はぁ…、んっ……」
最近の渉との情事は正直、気持ちよくない。
わざとそう自分で運んでいるので構わないのだが、快感から遠ざかっていた体は神楽の愛撫に歓喜の声を上げていた。
「三男としてる時もそんな感じ?」
ぶわりと沸き起こる咲也の色香に神楽は煽られ、赤い顔で強請るような視線を向けてくる咲也に呑み込まれた。
苛めて啼かせて、咲也を暴きたい欲望に駆られた。
「その瞳が快楽に堕ちるとこ見せて」
眼鏡のフレームを器用に口で咥え、咲也から眼鏡を取り払うと神楽は魅惑の紅茶色の瞳へ熱に浮かれた自分を映して、ほくそ笑んだ。
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