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第127話
side 優一と綾人
深夜0時。
寝室にて優一が綾人を抱き締めては情事に持ち込む熱いキスを交わしていた時、部屋の扉がノックされた。
その音に忌々しげに舌打ちしては、事に及ぼうとする優一を綾人は制止、扉をそそくさと開きに行った。
咲也が兄と仲直りしたくて来たのだとばっかり思っていた二人なのだが、扉の向こうに立つのはまさかの神楽だった。
「神楽先輩!」
綾人の声に優一も読みが外れたと驚いた顔で視線を向ける。
「遅くに悪いな!ちょっと、優一に言っときたいことあって」
中に入るよう進めたが神楽はこの場で構わないと綾人に言って、優一を見て微笑んだ。
「お前の弟、俺がもらうから」
優美に宣言する神楽に綾人は驚きから口を開いては閉ざせない状態に陥った。
かくいう優一も全く同じ状況で、神楽はそんな二人を見て声を上げて笑った。
「ま、待て、待て、待て!お前、咲也のことタイプなわけ!?」
初耳だと身を乗り出して冷や汗を流す友人に神楽が妖しく微笑む。
「お前に似てるし範疇外だったんだけど、最近クるもんを感じてさ。でも、遊びじゃないからその辺は安心してくれていいぜ」
「いや、遊びじゃないって言われても…」
「俺じゃ不服?九流の三男の方が信用できる?」
神楽の自信ありげな言葉に優一は乗り出した体制を戻して冷静さを取り戻そうと努めた。
神楽はチャラけた軽い男に見えるがその実、とても誠実な男なことを優一は知っている。
一度熱を上げると相手が去らない限り、決して離すことはない。
対する渉は幼い時から知っているだけに、安全牌だと思えた。だが、以前の咲也への仕打ちには正直ガッカリするものもあり、どうしたものかと頭を悩ませていた。
そんな思いも結局は咲也自身の気持ち一つなのは重々承知だ。だが、自分の後を幼い頃からずっと追いかけて来た弟を想えば少しの保護者魂ぐらい流石の優一にも生まれていた。
「……言っとくけど、あいつはドMだがアブノーマルなプレイは向かないぞ?」
自分と同じサディスティックな性癖を持つ神楽に警告する。すると、神楽は肩を竦めて笑った。
「少しずつ、俺好みに仕上げるさ。咲也が俺を選んでくれたらね!」
だから要らぬ心配はするなと豪快に笑い飛ばす神楽に低く、不機嫌な声がその話を中断させた。
「……咲也がなんだって?」
神楽が声がした方を見やると、そこには眉間に皺を寄せた渉が立っていた。
綾人が扉口から顔を覗かせると、最悪な時に訪れたなと顔を顰めて、優一へ渉が来たことを口パクで伝えた。
「咲也に惚れたって話だよ。友人の弟だし、一言耳に入れときたくてね!俺の要件はこれだけ。邪魔して悪かったな!じゃ、おやすみ」
修羅場を思わせる展開にも関わらず、神楽は渉に包み隠さず内容を打ち明けると、あっさり身を引くように挨拶をして去ろうとした。
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