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第128話

「……この事、咲也は知ってんの?」 自分の横を通り過ぎようとした神楽へ渉が聞くと、神楽は不敵に微笑んでハッキリと咲也との距離感を告げた。 「伝えてるよ。ちなみに、キスもお触りもした仲だから。お前とより体の相性は良さそうだし、寝取る気、満々だからそのつもりで」 忠告と言うよりも宣戦布告を投げ掛ける神楽に渉はギリリっと奥歯を噛み締め、睨みつけた。 「何それ?咲也が浮気してるってこと?」 「浮気はお前だろ?あちこちでお手付きしてるらしいじゃん。咲也も知ってるし、夜の生活もかなりおざなりそうだよな。まさか傷付けて楽しむのが三男の趣向とは思いもしなかったから意外だったよ」 鼻で笑うようにあしらうと、神楽は右手をプラプラ振ってその場を去って行った。 その場に残された渉は眉間に皺を寄せて怒りに打ち震えると、踵を返して咲也の眠る部屋へと駆け出した。 「……え?これ、ほっといて大丈夫?」 自分達の部屋から二人が去っていき、綾人が頭を抱えて呟いた。 先ほど、咲也と一緒に綾人は渉の部屋へと訪れた。 悶々として一人時間を持て余していると踏んでいたのだが、どうやら悶々とし過ぎたのか渉は夜の散歩に出てしまっていた。 不在を確認した咲也は内心ホッとした様子で、綾人はそれを見て複雑な心境に襲われた。 自分の経験上、こういうスレ違いは早く解決するに越したことはない。 はたから見て、咲也と渉は間違いなく両想いだ。だから、その事にちゃんと咲也に気付いて欲しかった。 それなのに何がなんだか訳が分からない状態にどんどん事が運んでいき、綾人はどうすればいいのかと、縋るように優一へ視線を向けた。 優一もどうしたものかと、こめかみを押さえて瞳を閉じ、渋い顔付きになっていた。 「なんか、ややこしいなぁ……」 誰を応援し、誰を援護して、誰を信じていいのか二人は分からないと、大きな溜息を吐きながら模索することとなった。 side 優一と綾人 終わり

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