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第131話

「何、勘違いしてんの?俺が浮気って何?誰かに何か言われたのかよ!?俺がお前を裏切ってるって……」 静かな声は徐々に怒りを表すように大きくなって、渉はそれを止める為に奥歯をギリリと噛み締めた。 重苦しい沈黙が流れ、咲也自身どう動いていいのか分からなくなった。 渉の腕を払いのける勇気もない。 渉を見つめる度胸もない。 ただ……、一つ。 分かっていることは自分の不甲斐ない移り変わりが激しい恋心だ。 生涯を誓った兄から幼馴染みの優しさに包まれ、自分の想いが移り変わった。 そして色欲に溺れ、今は渉と神楽の間を揺れ動いている。 自分の汚さと弱さに心底沈んでいる今、誰とも付き合わない方がいいと何処かで分かっていた。 だけど…… それを選ぶ勇気もない…… 汚い身体 汚い想い それでも…… それでも俺は… 「渉……、好き…っ………」 捨てないでという願いを小声で呟くと、渉の大きな掌が咲也の目を覆い隠した。 次いで何かの布でそのまま目隠しされる。 動揺したが、渉を目の当たりにしなくていい状況下に心のどこかで安堵している自分に気がついた。 その汚さもまた己の心へ傷を負う。 汚れていく真っ白な心のキャンパスが黒いシミを作っては広がっていった 真っ黒になったと思ったキャンパスはそれでも飽き足らないのか、刃物で白い傷を幾多も作っていく。 その傷もまた、黒いシミが染み込んで消えてはまた新たな傷をつけていく。 繰り返し永遠とも思える苦行に涙は何故か出なくて困惑した。 ただ、ミシミシと何かが壊れそうな音が耳の奥で聞こえた。 何かが壊れそうで 何かが終わりそうな その音が怖い 助けて助けて…… 渉 渉 渉 「………にい…さま……」

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