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第133話

「イジメって……」 この状況下でよくそんな幼稚かつ短絡的な言葉を選んだなと綾人が愕然と呟いた。 だが、その言葉が適したかのように渉はギャンギャン泣いて頷いた。 「咲也が酷いっ!あいつ、マジで悪魔なんだぁあぁああーーー」 「……まぁ、優一の弟だしね」 渉の叫びに綾人が同調する。 「……なに?あいつが何したんだよ?」 訳を聞くまで帰りそうもない渉に呆れた優一が理由を聞いてやった。 幼い頃から体こそ渉の方が大きかったが、気も態度もでかい咲也にこの男は泣かされ続けてきた。 咲也だけならず、俺や二人の兄にもこき使われてよく泣いていた三男の渉。 俺や兄二人にイジメられた時は咲也に泣きついていたようだが、咲也にイジメられた時、渉は優一へと泣きついてくるのが常套手段になっていた。 それは今のこの年齢になっても健在で、こうなった二人の仲裁役を優一はいつも担っていた。 「俺、本当にあいつにいいように使われてたみたい。俺の事、利用していいって思ってた。最後は捨てられてもいいって……。だけど…、だけど……」 だらだら涙を流しながら愚痴を溢す渉は両手を握り締めて大声で叫んだ。 「やっぱり嫌だぁぁぁぁーーー!つーか、あの場面でゆう兄の事、呼ばなくてもいいじゃないかぁあぁあーーー!!馬鹿野郎ーーー!!!」 キーンと脳天を突き抜けそうなほどの叫びに優一と綾人は両手で耳を塞いだ。 迷惑なぐらいの声の音量で叫び泣く渉に優一はいつものように接した。 「俺のこと呼ぶって、何してたんだ?ってか、あいつのブラコン部分が出たのか?でも、それならいつもの……」 ことだろう?と、続けようとした瞬間、渉は優一を睨みつけて恥も捨て、怒声を放った。 「エッチの最中に恋人以外の名前を口にするなんてマナー違反もいいとこだっ!」 「………」 予想外な返答に流石の優一が固まる。 どうせ、自分と渉を比較するような事を咲也が口走ったのだと思っていたのだが、その様に安易な内容ではなかったらしい。 「……たまたまなんじゃないのかな?」 苦しい空気を打破する様に綾人が救いの手を伸ばしたのだが、渉のまさかの言葉にそれは無に還った。 「確かに意図的にゆう兄を思わせる様に触ったけど、それでも俺の名前呼んで欲しかったんだ!そしたら目隠し取ろうと思ってたのに……」 「目隠しって……。つーか、俺の様にってお前、俺の何を知って言ってんだよ!大体、どんなプレイしてんだお前ら!!」 情事の最中に自分を引き合いに出されているのかと優一が赤面しながら問い詰めた。 すると渉は少し戸惑いながらも白状した。 咲也との情事へ持ち込む為に優一を利用した事。 優一への恋心を逆手に取って、咲也の体を落しにかかった事を……。

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