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第135話

………終わった マジで終わった ここ連日、あの日を境に自分の元へと来なくなっていた。 学校から帰ってきて、そのままの制服姿のまま咲也はベッドの上で今日も涙を流す。 『……にいさま』 あの日、目隠しされて情事に持ち込まれた咲也は無意識に兄を呼んでしまっていた。 そのあと、目を隠していても分かるほどの空気の冷たさに硬直していたら渉は静かに部屋を出て行った。 もちろん、それを止める事は自分には出来なかった。 「俺の馬鹿……、マジで死ね…」 己自身に悪態を吐く。 どうして兄を呼んだのか自分でも分からない。 ただ、どうしようもない渉への後ろめたさに涙が止まらない。 あれほど心の中で渉を呼んでいたのに あれほど渉を欲していたのに…… 出た言葉がまさかの兄だなんて 「渉に愛想尽かされても文句言えないな…」 少しズレた眼鏡が邪魔で乱暴に取り、ボヤける視界で誰もいない部屋を一巡すると、再び涙が流れた。 「ぅ……、ぅえぇ〜〜んっ、に、兄、さまぁぁあぁ〜〜…」 誰かこの苦しい心を救ってくれと咲也は子供のように声を上げて泣く。 その時、咲也の携帯電話が鳴った。 ベッドの下へ転がってはコール音を鳴らす携帯電話へ縋るように飛び付く。 手に取って着信相手を確認したら、それは神楽からだった。 『最後までお前の世話してみせるよ』 神楽が自分へ宣言した言葉を何故か今、思い出す。 電話に出ない方がいい。 直感で何故かそう思った。 この電話に出たら自分は確実に神楽に泣きつくであろう。 そうしたら神楽はきっと駆け付けてくれる。 その優しさが分かっているだけに咲也の壊れかけた心は甘美な音を奏でる携帯電話へ指先を伸ばしそうになっていた。 「俺は……」 渉が好き… 兄様でもこの男でもない。 俺が好きなのは…… 「……渉」

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