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第138話

「んっ……、ぁ…」 合わせた唇の端から漏れる咲也の艶かしい声に神楽の下半身が反応を示していく。 寝込みを襲うつもりはなかった。 ただ、純粋に顔が見たかっただけで立ち寄ったのだが、眠る咲也の頬に涙の跡を見つけ、携帯電話を握りしめる仕草に渉が関係していることを察し、心が騒いだのだ。 これはヤキモチだと数少ない経験が己の気持ちに理解を示した。 その事に気が付いたら、一気に想いが溢れて目を覚ました咲也を押し倒してしまった。 本気で好きだからこそ優しく丁寧に順序よく関係を進めたい。だけど、相手は彼氏持ちで人に懐かないと有名なプライドの高い猫だ。 一気に崩しにかからないとと、神楽は焦ってしまった。 「咲也……」 好きだと続けようとした時、大きな怒声が艶かしい空気を一掃した。 「ちょっと待ったぁあぁーーーーー!!!」 ほんの少し開かれた咲也の部屋の扉の前に立った渉は中の様子がおかしくて、扉を叩く手を止めた。 そして、中から話し声が聞こえ、その声の主が神楽だと知って急いで部屋の中へと乗り込んだ。 ベッドへ上がって、情事へ持ち込もうとする神楽が咲也へキスをしたのを目撃した瞬間、考えるより先に大声を放っていた。 「……わ、たる…」 上体を上げて驚いたと、体を硬直させ、目を見張る咲也へ渉は距離を詰める。 咲也の上へ覆い被さる神楽の胸倉を掴んで引き起こすと、ライバルを前に拳を握りしめて大きく振り下ろす。 しかし、その手を難なく止められ、カウンターを喰らった。 「っ!!」 予想外の痛手に足がふらつき、一歩後退する。 「いきなり殴られる道理はないけど?」 冷ややかな視線と声色で告げられ、渉は咲也を指差し言い返した。 「咲也に手を出すな!咲也は俺と付き合ってるんだ‼︎」 「付き合ってる?どうせ、セフレの一人なんだろ?俺は咲也に本気だ。お前が手を引けよ」 憤然と放たれた神楽の言葉に、自分がまた浮気をしていると誤解されている事を知った。 瞳を揺らして、自分を見つめてくる咲也を渉は睨みつける。 しかし、それを庇うように神楽が咲也を背に立った。 「言っとくけど、咲也とは同意だから。お前は振られ……」 「振ってない!」 神楽の嘘と誠が入り交じる文句に今まで黙っていた咲也が声を上げた。 神楽の肩を押し退け、咲也は自分の心の中の怒りや悲しみ、そして罪悪感を晴らしたくて、渉と対峙した。

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