140 / 222

第140話

「俺は咲也が、好きだよ。勘違いしてるようだけど、セフレとかそういうの、俺には一人もいないから」 優一と綾人、そして神楽までもが誤解しているなか、自分のこの発言が咲也にどこまで信用して貰えるのか分からなかったが、渉は自分の気持ちと無実を伝えた。 表情を固めて無反応な咲也からはこの言葉がどれ程の効力をもたらせているのかは謎だったが、渉は迷わず、ずっと考えていた提案をした。 「咲也、話し合おう?ちゃんと素直に互いの気持ちを伝え合おう?俺は咲也と話したい。俺の気持ち、ちゃんと伝えたい!」 一歩、距離を詰めると咲也の肩が震えた。 それを見た渉はなんとも言えない気持ちに駆られ、一気に咲也との距離を縮めるように歩を進めた。 「俺、咲也とは別れたくない!幼馴染みに戻りたくもないし、戻る気もない!!咲也が俺を好きって本当に想ってるなら、側にいろよ!不満があるなら言ってくれ!」 「……」 「咲也は振ってくれって言うけど、俺から咲也を振ることは一生ありえないし、咲也が別れたいって言っても俺は認めない!断固拒否する!一生お前に付き纏うから‼︎」 咲也の両肩を掴んで訴えると、横で神楽が呟いた。 「それ、ストーカーじゃねぇか…」 一歩間違えれば、言われた事がその通りなだけに渉はガクリと頭を垂らして撃沈した。 その姿を前に、咲也がクスリと小さく笑う。 「渉って本当、……渉だよな」 かっこ良いのか、かっこ悪いのか分からないと、クスクス声を上げて笑う咲也に渉はそっと顔を上げた。 紅茶色の瞳からは涙が消え去り、笑顔が目の前に広がる。 滅多と見せないクールでドライな咲也のレアな笑顔に渉はキューっと胸が締め付けられるのと同時に愛おしさを感じた。 「咲也!すきだぁぁあーーーー!!!」 体当たりさながらの告白を大声で喚くと同時に、咲也をキツく抱き締める。 「俺、優兄よりカッコ良くないし強くもない!優兄を越えたい気持ちはあるし、今後も越える努力は怠らない!それは約束する‼︎だから……だからっ‼︎」 気持ちが高ぶり、不安が押し寄せ、渉の声は震えて涙声になっていった。 咲也を抱き締める腕の力が強まり、それは縋っているようにも感じられて、咲也は広く大きな背中を抱き締めてやる。 その後押しに詰まらせていた言葉を渉は音にして吐き出した。 「側にいたい……。お前の…、咲也の特別でいたいよ………」 切に願うように告げられた想いに咲也は渉の背中の服をしがみつくように握り締めた。 その姿を見て、神楽は小さく溜息を漏らすと静かに部屋から出ていった。

ともだちにシェアしよう!