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第142話
するすると制服のネクタイを解かれ、シャツのボタンを外しては素肌に触れてくる渉の大きな掌に咲也は恥ずかしそうに瞳を伏せて顔を反らせた。
「恥ずかしい?」
伏せた瞳を自分へ向けるように顎を指で掴んで上を向かされ、咲也は顔を真っ赤に染めた。
「うるさいっ!いつもみたいにさっさとしろよ!!」
照れから口調は乱暴になり、投げやりに体を開くと渉がそんな咲也を鼻で笑った。
「冗談だろ。今日はゆっくり、俺好みに抱かせてもらうから」
「なにそれ」
「最近、ドMの世界に目覚めたのかと思ったけど、違うよね?」
「はぁ⁉︎」
何のことを言っているのか分からなくて咲也が素っ頓狂な声を出すと、渉が首を傾げて聞いてきた。
「いや…、最近、痛がるエッチしたがってたから。痛い方がいいわけ?」
「そんなわけあるかっ!ボケッ‼︎」
真っ赤な顔で叫ぶ咲也に渉が、だよな。と、笑って、か細い体を抱きしめた。
「……っん」
首筋を吸われて咲也が肩を竦めると、そのまま鎖骨に沿うように舐められた。
衣服を優しく剥いで、滑らかな肌の感触を楽しむように渉の掌が丁寧に身体中を張った。
「……ちょ…、別にそんな丁寧にしなくていいから」
女でもないし平気だと咲也は口籠もりながら渉の手を制した。
痛いのが好きなわけではない。
だけど、丁寧にされるとなんだか歯痒くて恥ずかしくて落ち着かないのだ。
嬉しい気持ちより恥ずかしい気持ちが勝って咲也はぶっきらぼうな態度を取ってしまっていた。
自分のそんな可愛くない態度に気分を害したのか、渉が無言になってしまい、咲也に変な焦りが生まれた。
この気持ちをどうやって言葉に表していいのか分からなくて、不安に揺れる瞳を向けた時、渉の整った顔が目の前いっぱいに広がり、怒りを伴う声で告げられた。
「ふざけんなよ。俺好みに抱くって言ってんだろ」
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