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第147話
「うあぁぁあーーーーーー!俺のばかぁぁあーーー!!」
「やかましいっ‼︎」
頭を抱えてソファの上で突っ伏し、大声で自身を蔑む渉に、何かの書類を丸めた紙くずを力一杯、優一は投げ付けた。
頭に直撃したその紙くずが地面に転々と転がる様を見つめ、再び渉は優一の怒号を無視して泣き叫ぶ。
「俺のバカ!バカバカバカバカバカァーーーー!!」
「てめぇがバカなのはずっと前から分かってんだよっ!つーか、うるっさいから出てけ‼︎」
紙くずから分厚いファイルへと攻撃物が変わり、渉の顔面を強打する。
大学の論文に家からの課題がここ最近溜まりに溜まっている優一はとても多忙だ。
恋人である綾人との時間すらまともに取れなくてイライラが日々募っているのに、弟の微妙に認めてはいない恋人の相手など正直、今はしたくない。
その様が前面に出ている優一を渉はファイルがぶつかった顔面を手で押さえながら大きな声で抗議した。
「ちょっとは話聞いてよっ!咲也のことなんだからさー!つーか、綾ちゃんは!?優兄が聞いてくれないなら綾ちゃんに聞いてもらいたいーーー!!」
両手足をバタバタさせながら要望を告げた時、優一の紅茶色の瞳がスッと細められた。
「あぁん?てめぇ、俺があいつと会うのも我慢してるのにお前がこの俺様を差し置いて会うっつーのか?」
珍しくも言葉遣いが荒れてる優一を前に渉は質問の問いに間違えようものなら命を奪われかねないと、青い顔でフルフル首を横へと振った。
そんな従順に口を閉ざし、固まる渉を確認すると、優一はふんっと鼻を鳴らして分厚い書類に視線を戻した。
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