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聞き終えた隆文の第一声は、「その女の先輩は、お前についてなんか言ったの?」だった。心なしか、憮然とした色が浮かんでいるような気がする。
「え、そこ? 気になるのそこぉ?」
(まさか嫉妬……なわけないよな。って、嫉妬ってなんだよ嫉妬って!)
敬は、分からんなー、と小首をかしげた。
「熱心なファンがいる感想は?」
「そういうファンがいてくれるのは本当にありがたいよ」
「うん、俺もお前って本当に人気なんだなって改めて思った。そうだな、あとは、俺がお前と友達だって言ったかどうかは?」
「――それは気になる」
隆文の眉がぴくりと上がった。
「言ってないよ。サインとか会わせてとかそういうの苦手だろ。いらぬ迷惑かけたくないからさ。いい親友だろ?」
少しの間の後、
「そう、だね。いい親友がいて俺は幸せだよ」
隆文が柔らかく微笑んだ。
そう、自分は彼のいい『親友』だ。
「うん、我ながらいい『親友』だ」
繰り返しながら、喉の奥が痛んだような気がして押し黙る。
どうした? と尋ねてくれた隆文に、なんでもないと返し、敬は温くなったコーヒーを飲みほした。隆文も、ならいいけど、とコーヒーを飲みほし、舌でちろっと唇を舐める。その唇や舌が、やけに目につく自分が、嫌だ。
「で、その女の先輩はお前のことなにか言ってたの?」
強引に話を元に戻してきたのがおかしくて、敬は少し口元をほころばせた。
「なんだっけ、ギャップ萌えーって言われた」
「はあ!?」
急に隆文が大声をあげたものだから、敬のすっとした目がまん丸に見開く。隆文は形の良い口を歪ませ、ずいっと身を乗り出してくる。
「ギャップ萌えってなに!?」
「え、見た目と中身が良い意味で違うねって」
「なにそれ、口説かれてるんじゃないか!?」
「は? そんなんじゃないない、コミュニケーションだろ」
「コミュニケーション!?」
敬は語気を荒げる隆文にとまどいつつ、どーどーとなだめにかかる。
「ほら昔、ギャップが敬のいいところだって言ってくれたのお前じゃん。だから俺は自分を受け入れられて、人ともうまくやれるようになったんだからさ」
「そう、言われちゃうと……」
隆文は、ふーう、と深呼吸してバツが悪そうに頭をかいた。そして、敬が口を開く前に「お風呂、借りるね」と、空になったマグカップを持って立ち上がった。
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