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第7話

年が明けた繁華街。 どこかしこからも聞こえてくる正月の音楽に街は包まれ、初詣やら初売りやらに向かう人々で賑わっている。 渋谷にある某ビル。 その中のワンフロアーにオリバーエンターテイメントSクラスのレッスンスタジオはある。 全面ガラス張りのその部屋は30畳程の広さがあり、のびのびとレッスンを受けられる様になっていた。 オリバーエンターテイメントの未来のスター候補生達の事を、この事務所内ではstudentsと呼んでいる。 部屋の中には10代の若い青少年達からなる、20名弱のstudentsがおり、部屋の中央に集まっている。 そんな彼らの前に、神崎悟と加藤未来は並んで立っていた。 「やっべ~、まじ可愛くない?」 「うん。大きくなってるけど、顔はやっぱ可愛いなぁ」 「なぁ~、相変わらず美少年っ」 ここ最近の専らの噂になっていた未来の入所。 元とはいえ芸能人だった彼を前に、皆がざわめきたっている。 予想通りな彼らの反応に悟は心の中で苦笑するしかないが 「んぅんっ!皆静かにっ」 声を大にし悟は青少年達に呼びかけた。 少しきつめの声色だった為か、一瞬にして彼らは静かになった。 「今月からうちに入所してくれた加藤未來君だ。知ってる子が殆どだと思うが変な気遣いは必要ないし、間違ってもサインなど要求しないように」 芸能人の卵な彼らだが、いやだからこそか、身内以外の有名人と会う機会はおろか、絡む機会など無いに等しい。 だから彼らが浮き足立つ気持ちは悟とて十分解るのだが、ここは遊びの場ではない事、未来と立場は同等な事を理解して欲しくて今日この場に出向いた。 のだが、果たして効果は如何程か…。 「じゃぁ未來、一言挨拶して?」 不安は残る中だったが、悟は未来の背中を少し押しそう促した。 「あ、はい。加藤未來です。宜しくお願いします」 ※※※ レッスン後のスタジオ。 仲のいい者同士集まり、話ながら身支度をしている。 「いやぁ~、やっぱめちゃめちゃ可愛いなぁ~、加藤未來っ」 デオドラントシートで体を拭きながら、そう言ったのは10代半ばの少年。 挨拶をした後、未来は施設内の案内や諸々の説明を受ける為、レッスンには参加せずに早々にこの部屋を出ていった。 「まぁそうだな。でもさ、すげー贔屓じゃね?だって今まで悟さんが新人挨拶についた事なんてあった?」 「いや、ないでしょ。でもそりゃ贔屓もするって。だって相手はあの一斉風靡した天才子役様なんだからさ~」 自分達とは未来が違う存在なのは少年達も解っている。 特別視されて当然な事も理解は出来る。 しかしどこかで納得いっていないのだろう。 その気持ちが負の感情を見え隠れさせていた。 「はは、そりゃそーだよな。俺らとは違うよな」 「そんなん当たり前だろ?デビューをさせてもらう為にstudentsになったんじゃない、デビュー前の肩慣らしにstudentsになってんだからさ~」 「ですよねぇ~」 表立って未来を否定している訳ではない。 しかし全くもってウェルカム体制にはなれない様子の少年達を、少し離れた場所で着替えをしながら森山大和は傍観していた。 未来がレッスンに加わるのは確か来週からと聞いている。 はてさて、自分の身の振りを如何しようかと大和は少しばかり頭を悩ませた。

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