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第10話

新学期を迎えるのには相応しい澄み切った青空が、登校する学生達の足取りを軽やかにする。 港区にあるインターナショナルスクール。 校門では数人の教員が立ち、生徒達を朝の挨拶と共に迎えている。 学校指定の紺のダッフルコートに身を包んだ加藤未来もまた、他の生徒達同様おはようございますと先生に返しながらその門を通った。 「あっ、未來君だっ!」 学園の正面玄関付近で立ち話をしていた女子生徒が、そんな未来の姿を発見するやいなや弾む声をあげた。 「本当だっ。朝から見れるなんてラッキーっ。あ~っ、相変わらず美少年っ」 「ね~、本当可愛いよね~っ」 一緒にいた他の女生徒も同様に、瞳を輝かせ薄ら頬を染めて、歩く未来を見つめ暫しの目の保養タイムを楽しんでいる。 そんなこの学園の朝のお決まりの光景を、未来の少し後ろから歩いてきていた少年は少し苦笑いを浮べながらみやり、そして。 「おっはぁ~。相変わらず騒がれてんなぁ~」 年の頃の少年達より頭1つばかり高い身長に、手足の長い所謂恵まれたスタイルの少年、こと 井上琉空(りく)は、丁度下駄箱で靴を履き替えていた未来にそう声をかけた。 「琉空、おはよ」 「ってかあけおめ。今年も宜しくなぁ~」 「うん、宜しく」 にかりと笑って年始の挨拶を述べる琉空に、未来も笑顔と共に応えると、2人は並んで教室へと向かって行った。 ※※※ 教室に着くと2人は自身のロッカーに荷物を押し込み、そして窓際の1番後ろに並んで座った。 自由と自主性を掲げるこの学園では自分の席という物はない。 なので生徒達は好きな場所で授業を受ける事ができる。 「ってかそういえばさ、どうだったの?レッスンは」 琉空は未来の顔を覗き込みうきうきとそう質問した。 「あ~、どうって別に。なんか紹介や案内とかされただけで、レッスンっていうレッスンはまだ受けてないから」 だから期待する様な面白い話は何もないよ、と暗に伝わる様に未来はさらりと琉空にそう応えた。 「ふ~ん、そうなんだ。まぁ~でもそれもそうか。初日だったんだしな。でもどう?事務所の人達とは。上手くやってけそ?」 あからさまにつまらなそうな顔を浮かべた琉空だったが、しかしころりとまたイタズラな笑みへと変えた。 「ん~、どうかな。まだ誰とも喋れてないし解んないよ」 「そっか。まぁ~でも頑張れよ。苛められても負けんなよ?」 そう言って一応激励と応援をしてくる琉空に、未来もありがとうと笑顔で返事するも、琉空の言う苛めというワードが僅かな懸念を未来は感じる。 しかし再び芸能界に挑むと決めた日から、僻みやっかみは覚悟の上。 どんな環境も乗り越えてみせると、ふつふつと士気を高めていったのだった。

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