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第61話
学校の昼休み。
いつもの階段の踊り場。
未来と琉空は昼食を食べ終えて、残りの時間をまったりと過ごしていた。
「あ~、でも明日でクランクアップとかなんか信じらんないなぁ~。ってかあっという間だった~」
飲んでいたミルクティのパックを片手に、未来はそう言って少し残念そうに眉を下げた。
「へ~、明日で最後なんだ?撮影」
「うん。最後」
「何?寂しいとか思ってんの?」
そう言って琉空は悪戯な笑みを未来に向けた。
「そりゃぁね。凄いアットホームな現場だったし、皆素でいい人達ばっかだったから。それに楽しかったし」
「確かに。楽しそうだったよ、お前。やっぱ好きなんだな、芸能界」
芸能界に戻る去年までとは打って変わって、生き生きとしている未来を間近で見て琉空はそう思った。
「そうだね。久しぶりに仕事して僕も思った。本当今楽しいよ」
友達と遊んだりまったり過ごした毎日は、それはそれで悪くはなかったが、しかし自分は朝早くてしんどい日が続いても、そんな毎日の方が楽しいと未来は思った。
そして、芸能界が自分のいたい居場所なんだと、そう改めて思った。
※※※
「そうね…。あなたがそんなに楽しめてるならそれはそれで母さんも良いと思うわ。でもね、未來…。ちゃんとやるべき事はやりなさいっ。宿題まだやってないでしょっ。それにあんた、こないだの理科の点数なにっ?」
家に帰り、ありさにも今が楽しい、芸能界復帰を認めてくれてありがとうと感謝を述べると、予想に反してありさの雷が落ちた。
それにしても、何故ばれたのだと未来は思う。
絶対に見つからないだろう場所に隠したというのに、まさかばれるとはと、未来が不思議に思っていると
「事務所入る時約束したわよねっ?ちゃんと勉強もするって。出来ないなら母さん、悟さんに言って仕事受けさせないようにしてもらうわよっ」
「なっ、解ったっ解ったっ。ちゃんと勉強も頑張るからっ。それはまじで止めてっ」
有言実行タイプの母親に、焦りを感じた未来はそう言ってありさを宥めた。
「ならさっさと宿題やりにいきなさいっ。終わるまでご飯は抜きだからねっ」
リビングでの寛ぎを止めそうにない未来に、ありさはそうせっついた。
「なっ、そ、そんなっ。今日宿題多いのにっ」
「だったら尚更早くやらなきゃ駄目でしょうがっ」
「っ、解ったよっ。解ったってばっ、もうっ!」
そんな怒らなくてもいいのにと、未来はそう思うがしかし、ありさの逆鱗に触れて夕飯抜き、はたまた活動中止をされては敵わないと、未来は2階の自室へと駆け足で向かっていった。
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