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第65話

レッスン室で未来が大和達とストレッチをしながら開始を待っていると、入口で自分を呼ぶ悟の声がした。   「あ、未來っ。ちょっと来なさい」 「え、あ、はい。何ですか?」 手招きする悟の元へと掛けていきながら、未来は何の用だろうかと考えた。 悟からの用件など、仕事の話くらいしか思いつかないが、しかしこないだ映画の主演の話を貰ったばかりだ。 なので再び仕事の話というのは違うかなと思ったのだが   「え?凄いですね、それ」 「だろ?凄くいい話だろ?今回当たれば、ってか確実に当たると思うからもう続編はほぼ確定だ。どうだ?やってみるだろ?」 満面の笑みでにこりと笑い言う悟に、未来も瞳を輝かせ頷いた。   ※※※   家に帰った未来は、早速琉空に先程の話を電話でしていた。 「へ~、連ドラの主役ね~。映画の主役のオファーの次は連ドラか。まじ凄いね、お前」 自室でダンベルをお遊びに持ちながら、琉空はそう言って次々と仕事が舞い込んでくる未来に感心した。   「うん。自分でもそう思う。だってまさかこんなぽんぽんといい仕事させて貰えるなんて思ってなかったから」 しかしそれは琉空だけでなく未来も同じで、こんなにも順調にいけるとは予想だにしなかった。   「まぁ、でも良かったな。おめでとう。頑張れよ」 「うん、ありがと」 「でもお前また斗亜君と共演するんだよな?しかも今度はお前と斗亜君がメインで」 未来は嬉しそうに斗亜との共演を教えてくれたが、琉空は少し心配に思う。   「うん。そうだよ。だからそれも本当嬉しい。斗亜君とならやり易いし」 悟から斗亜との共演を聞いた時は驚いたが、前のドラマで自分だけでなく斗亜も注目されていた事を知っていたので、なるほどなと、未来は驚きはしたが納得もした。 「そっか。まぁとにかく頑張れよ」 心底斗亜を信頼している未来。 自分は大丈夫か、と思わずにはいられないが、しかし今何を言ったって伝わらないだろうと琉空は察した。 だから今は何も言わない。 がしかし、いつか流されてやっちゃったぁ、とか未来が言ってきそうな気がしてならないと、琉空は少し顔を青ざめた。 がしかし、そんな風にあっけらかんと言えるならまだ良いというもの。 レイプされたり傷つけられなければいいのかと斗亜は思い直した。 「まぁ、とりあえず応援してるわ」 「うん。ありがとう」 そう言って、未来は琉空との電話を切った。 そしてその折にLINEが1件入ってきている事を知る。 画面を操作しLINEを開くと相手は斗亜で、未来は琉空に電話する前に彼にLINEをしていた事を思い出した。  聞いてるよね?ドラマの話 という文面に、斗亜からの返信は   うん でもまさかこんな早くまた共演出来るなんて思ってなかっ たから、本当びっくりしたよ。   勿論嬉しいけどね。君とまた共演できて とあった。 未来は文を読みながら自然と笑みが浮かび、そして彼へ自分も楽しみだという内容の文章を打った。 本当に楽しみだ。 早く撮影が始まって欲しいと、未来はそう思った。

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