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第67話
昼下がりの休日。
大和と海斗はテイクアウトのハンバーガーを大和の家に持ち込み、食べ終わり今はまったりと過ごしていた。
「あぁ~っ、どうしよっかなぁ~っ。まじで悩むな~」
iPhoneを手に眉間に皺を寄せ何やら唸っている大和に、海斗は見ていた雑誌から視線をあげた。
「?何?どうしたの?」
「あぁ、未來の着信待受なんだけどさ~、どれにしようかなぁ~って。どれも可愛いからどれも捨てがたいんだよねぇ~。あ、お前はどれがいいと思う?」
そう言ってiPhoneを渡してくる大和に、海斗はどれどれと画面を見ると、目を丸くした。
「え、ちょっと何枚撮ってんの?連写?」
間違えて連写を何度もしてしまったのかと思う程、大和の写真ホルダーには埋めつくされる量の未来の写真があった。
「違うよ。でもあいつやっぱプロだよなぁ~。表情コロコロ変えてくれるし撮りがいがあるっていうか、しかも全部可愛いくない?」
「まぁ~…確かに可愛いけど…」
にんまりと笑顔を浮かべ言う大和に、海斗もそれに同調はするが、しかしだからといってこんな沢山撮らなくてもと思ってしまう。
「俺的にはこれかこれがいいかなぁって思ってるんだけど~」
「あ~、うん。俺もこの写真いいと思った」
大和の選んだ写真の1枚は海斗もいいと思ったもので、未来の愛らしさが全面に出ていて可愛いなと素直に思った。
「だよなぁ~っ。一番笑ってるしいいよなぁ~。あ、でもこの写真もよくない?このはにかみ具合が超可愛くない?」
「え、あぁまぁ…」
もう1枚の写真を海斗に見せながら言う大和。
確かにそちらの写真も可愛いと思う海斗だったが、しかし先程から可愛い可愛いと大和が連呼する事に、うざったさを感じていた。
「あぁ~、迷うっ!こんな写真きっと心を許してる俺じゃないと撮れないしっ。どうしようっ。どっちにしようっ。なぁ、どう思う?」
でれっとした顔を向けて聞いてくる大和に、海斗は言葉を詰まらせ口端を引き攣らせた。
「っ、知らないよっ。どっちでもいいし、ってかそんなに気に入ってるならどっちかは待受にでもすればいいじゃんっ」
大和のだらしない表情にも腹立たしさを感じるが、加えて俺にしかとかさりげに自慢した様な口ぶりがこの上なくうざいと海斗は思い、半ば投げやりに提案したのだが
「あっ、そっか。そうじゃんっ、そうだよなっ。その手があったか。お前頭いいな。よし、そうしようっ」
名案名案と、嬉々として自分の提案を採用しようとする大和に、海斗は口をあんぐりと開け固まった。
だってスマホの待受など、恋人でもないのに普通するだろうかと海斗は思う。
「あぁ~、っでも待受にするならこっちのがいいかなぁ~。あぁ、もぉ~、本当どれも可愛すぎて迷うわぁ~」
恋する乙女の様に、その容姿に似合わずきゃぴきゃぴする大和に、海斗の肩がわなわなと震え出した。
「っもぅっ!さっきから可愛い可愛いうるさいっ!そんなに未来が可愛いと思うなら、俺と別れて未来と付き合えばっ?!」
突然イライラとした口調で、大和としては訳のわからない台詞を海斗に言われ、大和の頭の中は疑問符ばかりが浮かんだ。
「は?え?何?お前何怒ってんの?」
「うるさいっ!別に怒ってないよっ」
海斗はそう主張するも、顔を赤くし瞳を鋭く声を荒らげる人物を、怒ってないとは大和には思えなかった。
「いや、怒ってんじゃん完全に…」
「っもういいっ!知らないっ!ちょっとジュース買ってくるっ!」
そう言って荒々しく部屋を出て行った海斗の背中に、大和は慌てたように声をかけるが、時既に遅し。
パタリとしまったドアを大和はぽかんと見つめた。
しかしながら、何だ?海斗は何を怒っていたのか、大和にはさっぱり意味が解らなかったが、その時は対して気には止めなかった。
まさかこれがきっかけで一悶着あるとは、この時の大和はまるで思わなかったのだった。
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