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第77話
合宿開始の挨拶をホールにて悟から受け、各クラスに割り振られたボーイズ・ガールズのstudents達は、それぞれ宛てがわれたレッスン室へと入っていった。
未来は綾人とクロエ、それに加え二人のガールズのstudentsと一緒のクラスになり、五人はそれぞれ自己紹介を交え、輪になって座り雑談していた。
「へぇ~、じゃぁ本当に偶々なんだ?入ろうって約束してた訳じゃなくて?」
未来とクロエの話を聞いた綾人は、そう言って二人の顔を交互に見た。
「はい。だから凄いびっくりしました。日本にいる事も知らなかったし」
「だって会った時に驚かそうと思って。こんな偶然って中々ないし」
おどけた表情をわざと見せる未来と、ニヤリと笑うクロエに、ガールズstudents、小柄な体型のボブヘアーの可愛らしい顔立ちの少女、相馬咲がくすりと笑ってクロエに同調した。
「確かにね。しかも学校まで同じなんてよっぽど相性がいいのね」
「だね。偶然ってか運命?赤い糸で結ばれてたりして~っ」
咲に続いたのはもう一人のガールズstudents、明るい髪色のショートカットが良く似合う、すらりと背の高いボーイッシュな少女、日比野遥は、未来とクロエを茶化すようにそう言った。
「えぇっ?いや、それはちょっと」
「まじで勘弁。こんなガキ臭い男完全にアウトオブだし。ってかもしそんな糸があったとしたら確実にぶったぎってやるわ」
心底嫌そうな表情を浮かべクロエが言うと、未来もまた眉間に皺を寄せて対抗した。
「っそれはこっちの台詞だよっ。僕だってクロエみたいな態度でかい女の子絶対勘弁っ」
「何ですってっ?私みたいな才色兼備な女の子滅多にいないんだからねっ」
「僕みたいな可愛くて才能もある人間も滅多にいないよっ」
あーいえばこーゆー。
テンポの良い中々な内容の二人の言い合いに、咲と遥はぽかりと口を開けて呆気にとられ驚くが、それに未来とクロエが気付く事はない。
「っ相変わらず自意識過剰ねっ。なんなの?その自信っ」
「そっくりそのまま返すよっ。クロエレベルの女の子なんてうちには沢山いるんだから、自惚れてたらデビューどころか永遠にTVにも出れないよ?」
次第に白熱していく二人の応酬に周りはただただ見守るばかり。
「っ、何それっ。ちょっと自分が仕事もらってるからってっ。ってかあんただって所詮studentsじゃないっ」
未「っ、なっ、そうだけどっ、でも僕は特別だからっ。絶対デビュー出来る自信あるしっ」
「あ~、そう。じゃぁさっさとデビューしたら?出来ないからstudentsに入れられてる癖にっ。あんたこそ自惚れてんじゃないわよっ」
「なっ…っ…!!」
クロエの言葉に未来が返す言葉が見つけられず、悔しそうに下唇をかみ彼女を睨んでいると
「ま、まぁまぁ。二人とも、落ち着けよ」
「そ、そうよ。折角久しぶりに会ったんでしょ?それにこれから同じ事務所、学校でやってくわけなんだからさ」
「仲良く、楽しくやろうよ、な?」
綾人に咲、そして遥に苦笑しながら口々にそう言われ、やっと未来は自分たち以外の人間が居た事を思い出し、あからさまにバツの悪い表情を浮かべた。
「っ、あっ、そ、そうですよね~。僕どうしちゃったんだろ~、はははは」
最悪だと未来は思う。
折角の純粋従順キャラが、クロエのせいで形無しだと思いながら、とりあえず笑って誤魔化そう作戦をしてみるが、周りからの目線からどうにも失敗を未来に伝える。
「はぁっ?何がどうしちゃったよ。あんたまさかここでも猫被って」
「クロエっ!ごめんねっ!さっきは言い過ぎちゃったけど、本当は会えて凄く嬉しかったから、これからも仲良くしてってね、ね?」
とりあえずこれ以上周りに醜態を晒す訳にはいかないと、未来は無理やりクロエの腕を掴み、そしてクロエにだけ見える角度で口を動かし、うんって言ってっ。今度ご飯おごるからっと伝えた。
「っ、そうねっ。仕方ないから仲良くしてあげるわ」
盛大に顔を顰めながら、クロエはデザート付きという条件の元、渋々未来に同調した。
そしてほっと胸を撫で下ろし、レッスンまだ始まらないですかね~と、未来はさらりと話題を変えた。
そんな彼をひっそりとクロエは見つめた。
アメリカに居る時も八方美人で猫被りだった未来の性格。
遠い異国の地での防衛本能からかと思っていたその性格は、紛れもない本性だった事を知り、クロエは苦々しい表情を浮かべ、難儀な子だなと改めて思った。
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