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第80話

合宿が終わり家に帰ると、未来は琉空にLINEでただいまと帰宅している事を伝えていた。 そして今。送信から約30分後。 琉空からの着信を未来は取った。   「お帰り~、お疲れ~、お土産買ってきてくれたぁ?」 琉空は部屋のベッドにごろりと転がりながらiPhoneを耳にあて言った。   「はぁ?お土産?そんなのないよ。あ、でも悪い知らせなら一個あるよ」 「は?悪い知らせ?何?お前何したの?」 お土産がない悲しみなど一瞬で吹っ飛ぶ程、琉空は未来の言う悪い知らせが気になった。 「いや、僕は何もしないよ。でも新学期からの学校生活はきっと今までみたいに穏やかには過ごせないと思うから、覚悟しといた方がいいよ」 「は?何で?何があんの?」 具体的な事を言わない未来に、琉空は思わずがばりと身を起こし、割と真剣な声音でそう聞くと   「新学期になればわかるよ。はぁ~っ、でもまじで同じクラスにはなりたくないな…」 「は?何それ。一体何がある」 「うわっ?!しまったっ。最悪っ!」 疑問符ばかりが浮かんでいた琉空の耳に、何かがガチャガチャと崩れ落ちる音がした。   「?!何?どうしたの?すっげー音したけど」 「あ~、今部屋掃除してたんだけど、積んであった荷物が全部落下してきて余計部屋が散らかったっていう」 未来はせっかく先程からせっせと机に積み上げた書類やらDVDやらなんやらが、全て床になだれ落ちてしまった光景を呆然と見つめながら答えた。   「成る程ね。そりゃ最悪だな」 悲惨な光景が見なくても安易に想像出来、琉空は口端を引き攣らせてそう言った。   「本当もぉ~っ、やだっ。でも片付けなきゃな。明日斗亜君来るから」 未来はため息混じりにそう言いながら、のろのろとした動きで徐にまた散らかった物達を机の上に乗せ始めた。   「え?そうなの?お前んちに?」 「そう。だから掃除なんかわざわざしてるんじゃん」 誰も来なければ合宿帰りで疲れているのに、掃除なんて誰がするかと未来は思う。   「そっか。でもお前、大丈夫か?あんまり二人っきりにはならないようにしろよ?」 「は?何で?」 「何でって…」 身の危険を少しは心配しろと、言いかけたが琉空はとどまった。 だって家にはありさもいる。 いくら部屋に二人っきりになったとしても、流石に親のいる家で襲われたりはしないだろうし、もしそうなったとしても逃げればいいだけだと琉空は思ったからだ。 「いや、何でもない。部屋片付きそう?」 「え、あぁ、まぁ多分」 「そっか。じゃぁ明日楽しんでな、斗亜君と」 そう言う琉空に、未来はうん、じゃぁまたと言って電話を切った。 がしかし、この散らかりまくった部屋は明日までに片付くのだろうかと、未来は部屋を見渡し小さくため息をついた。 まずは先程落とした物を片して、それで掃除機かけて…。 改めて頭の中で順序だてると中々に面倒臭くて、未来はまぁいっか、片付かなかったらリビングでも別に問題ないよねと、早々に諦めた。

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