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第6話
怜也はよく、凱のアパートへ遊びに来た。
今日もまた、蚤の市で買った花瓶を携えてやって来ていたのだ。
「……」
相変わらず、花瓶を手入れしている怜也。
意気込んで『夫婦になる』などと言った割りには、静かなものだ。
たまらず、凱の方から話しかけていた。
「なぁ」
「ん?」
「何かアクション起こさねえの? 原稿真っ白の疲れた夫に」
「何かして欲しいの?」
それは、と凱はぼやいた。
「妻なら、疲れたでしょう、とか言ってお茶を淹れてくれたりしねえ?」
「そうか。凱、夫婦に詳しいね」
「恋人同士でもやるだろ、普通」
気の利かない妻からスタートを切ってしまった怜也だったが、お茶の仕度は完璧だった。
きっちり凱好みのコーヒーを淹れてくれたのだ。
「雑味のない、まろやかな旨味。お前、コーヒー淹れるのが巧くなったなぁ」
「凱で、散々練習したからね」
そういえば、こいつとの付き合いも相当長い。
夫婦と言っても遜色ないほど、年季が入っている。
「ま、まぁ、コーヒー程度じゃ良妻には遠いけどな」
「厳しいな」
美味いコーヒーは味わったが、結局何も書けないままに終わった凱だった。
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