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第15話
「悪口いっぱい書かれてたりして」
そんな軽い気持ちだったが、読み終わると満たされた気持ちになっていた。
原稿用紙は、妻に対する感謝の気持ちと深い信頼、そして大きな愛情で綴られていたのだ。
『好きな奴なら、夫婦になってみるのも悪くない』
凱らしい言い回しではあるが、『よせよ、面倒くさい。四六時中監視されるなんて……』などと言っていた男の劇的な変化だ。
「嬉しいな」
陽だまりの中、柔らかな笑顔でもう一度読み返した。
嫌われてるんじゃないか、と思った時もあったけど、今まで一緒に生きて来て良かった。
「ただいま!」
張りのある声に、我に返った。
帰って来たのだ、凱が。
元あったように原稿を置くと、怜也は出迎えに走った。
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