15 / 17

第15話

「悪口いっぱい書かれてたりして」  そんな軽い気持ちだったが、読み終わると満たされた気持ちになっていた。  原稿用紙は、妻に対する感謝の気持ちと深い信頼、そして大きな愛情で綴られていたのだ。 『好きな奴なら、夫婦になってみるのも悪くない』  凱らしい言い回しではあるが、『よせよ、面倒くさい。四六時中監視されるなんて……』などと言っていた男の劇的な変化だ。 「嬉しいな」  陽だまりの中、柔らかな笑顔でもう一度読み返した。  嫌われてるんじゃないか、と思った時もあったけど、今まで一緒に生きて来て良かった。 「ただいま!」  張りのある声に、我に返った。  帰って来たのだ、凱が。  元あったように原稿を置くと、怜也は出迎えに走った。

ともだちにシェアしよう!