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低身長男子の片想い
日曜日のワンダーランドカフェ。
小山直也 は、姉の彩愛 のわがままに付き合う形で、ここに来ていた。
周囲は女性ばかりだから、なんだか気まずい気持ちになるし、本音を言えばさっさと出ていきたい。
しかし、大半の弟がそうであるように、姉には逆らえない。
──はやく明日になってくんないかなー……伊伏さんに会いたい
小山はひそかに、事務職員の伊伏に心を寄せていた。
背が高く、がっしりした体の割に性格は大人しく、そのギャップに惹かれたのだ。
一方で、仕事はきっちりしていて、本人が気づいているか定かではないが、何気に周囲からの信頼も厚い。
そんな彼と少しでもたくさん話したくて、一気に提出すれば済む書類を小分けにして出したり、事務に用がある人がいると、「オレも事務に用があるから、代わりに行くよ!」と名乗り出たり、ときには何の用も無いのに事務カウンターに行くこともあった。
そのたびに伊伏は迷惑そうな顔をしつつ、きちんと対応してくれるから、小山は嬉しくて、ついついまたちょっかいを出してしまう。
まるで好きな子に意地悪する小学生だな、と自分でも思うが、ガードの堅い彼に接触する方法がわからない。
それに、彼の恋愛対象が女性なら、小山に望みはないのだし、だったらこうして会うだけで満足だ。
「ねえ、直也。見てよ、あの子たちのカッコ!すっごくかわいー!」
彩愛が、少し向こうのテーブル席に座っている4人グループを指差した。
「おい、人様を指差すなよ」
言いつつ彩愛が指差す方へ目をやると、なかなかクセの強い格好をした女性たちが、食べながら談笑している様子が目に飛び込んだ。
3人は小柄な女性で、1人は突き抜けて大きい。
フリルやリボンがたくさんついた服を着た4人が、食事している様子をしばらく見ていると、ふと、あることに気がついた。
──あの大きい人の声、どっかで聞いたことある?
そんな違和感を抱きつつ、小山は「トランプの兵隊」と小洒落た名前がつけられたピザをかじった。
姉は小山が思っていた以上に、店に長居をし続けた。
メニューで悩んだり、料理の写真を撮ってSNSにあげたり、トイレでメイク直ししたり、帰りたがる小山を散々わずらわせて、やっと帰る気になったらしい。
さあ、これから会計というとき、カウンターに、あの4人組が並んでいた。
全員が全員、個性的な服を着て「おいしかったね」「また来よう」と楽しげに会話している。
そこで小山は、あることに気がついた。
「ねえ、ひょっとして、伊伏さん?」
声をかけてみると、4人の中で一番高い位置にある頭が動き、こちらを振り返った。
──やっぱり、伊伏さんだ!!
「やっぱり、その声、伊伏さんじゃん!こんなとこで会うなんて、すごい偶然っスね!」
あまりの嬉しさに、小山は思わず声をはずませた。
どうしてあんな格好をしているのか気になったが、密かに恋焦がれている相手に会えた嬉しさが勝って、今はそんなことはどうでもよかった。
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