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告白

小山は次の日も、またその次の日も、光史朗に「一緒に食事しよう」と迫ってきた。 「営業部の女の子たちと行ったら?あの子たちの何人かは、小山さんのことねらってるらしいよ?あと、うちの事務の子たちも、小山さんのことイケメンだって褒めてたし……」 いいかげん、ひとりで静かに食事したい光史朗は、それとなく小山に他の場所で食事するよう促した。 ──悪い人じゃないんだよな……むしろいい人なくらいなんだけど… 「思ったより悪いじゃないのかも」という憶測は当たっていたには当たっていたが、予想に反した小山のこの言動には、少しばかりウンザリしてしまう。 「えー、別にいいよお。あ、ところでさ、伊伏さんが着てた服のブランド、名前はなんだっけ?ベイビー……」 小山は食堂のカウンターで頼んだしょうゆラーメンにまともに手をつけずに、ずっと話し続けている。 「えっと…ベイビー・ザ・スターズ・シャイン・ライトのこと?」 光史朗は、茶碗に盛られたご飯を一口分、箸でつまんだ。 「あ、そうそう、それそれ!」 小山はひとり納得したような顔をすると、スマートフォンを取り出していじりはじめた。 「これかな?」 小山が、持っていたスマートフォンの画面を光史朗に向けてきた。 画面には、光史朗が好きなロリィタファッションブランド「ベイビー・ザ・スターズ・シャイン・ライト」のホームページが映っている。 「そうだけど……」 光史朗は白米を口に放って、みそ汁を流し込んだ。 「すごいな、こんなにたくさんあるんだ。ベールついたカチューシャとか、バラとか羽がついたシルクハットとか……アクセサリーだけでもすごい金額だね。 フルでコーディネートするといくらかかるの?」 「モノとか、ブランドによるかも……」 サバの味噌煮をつまんでは口に入れ、つまんで口に入れを繰り返しつつ、光史朗は小山の疑問に答えた。 「へえー、まあ、5万くらいとか?ヘタしたら10万とかいく?」 「うん、まあ、それくらいかな…」 「あと、前に教えてくれたメタモルフォーシス?っていうブランド?あれのサイトも見たよ。和柄のロリータとかあるんだねー」 「うん、まあね。あのさ…ラーメン冷めちゃうよ?」 光史朗は、未だに手をつけられていないしょうゆラーメンの丼を指差した。 「え?ああ、そうだね。早く食べなきゃ!」 小山はスマートフォンを脇に置くと、割り箸をぱきっと割った。 「ね、伊伏さんって彼女はいないんだよね?」 言うと小山は、麺を箸でつまみ、息を吹きかけてラーメンの熱気を飛ばした。 「そうだけど……」 「じゃあ彼氏は?」 「いないけど……」 光史朗は、少しムッとした。 どうしてそんなことを聞いてくるんだろう? 前々から理解できない人だとは思っていたが、最近の言動は特にわからない。 一体、何が目的なのだろう? 「ね、よかったらなんだけど…」 小山が一端、割り箸を脇に置き、光史朗の目をジッと見つめた。 「何?」 それに続くように、光史朗も箸を置いた。 小山がコホンと咳払いをすると、その口がゆっくり開く。 「オレと、付き合ってくれない?」

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