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第7話 お互いの気持ち
「……ん……」
瀬名の舌が、俺の乳首にそっと触れた。いつになく熱くて、心地よく湿った舌の感触。すごく久しぶりだ。ほんの一週間触れ合わなかっただけなのに、まるで一年くらい離れ離れだったような感じがする。身体が一瞬にして熱く火照り、いつも以上に瀬名の舌をいやらしく感じた。
思い返せば、瀬名と口を利かなかった一週間、俺の性欲は行方不明だった。オナニーも全然してない。だから余計に瀬名の全てがエロく見えて、落ち着かない……。
「……は……。瀬名……」
「翔……脱いで。上……。身体、見たい」
「お、おう……」
瀬名の掠れた声、ぞくぞくする。俺は導かれるままジャージを脱いでシャツを抜いた。すると瀬名は眩しげに俺の身体を見つめて、唾液で濡れて艶めいた唇から、ため息を零した。
「……いい身体してやがんな」
「そ、そうかな」
「はぁ……一週間もお前にさわれねーとか、マジ拷問……」
そう言って、瀬名は俺の乳首に唇を押し付け、なまめかしく上下に舌を動かした。これにはさすがの俺も堪えきれず、ついつい声を漏らしてしまう。
頬を染めて目を閉じて、夢中になって俺の乳首を味わう瀬名の表情は、たまらなくエロい。潔くバッサリ切られた瀬名の柔らかな短髪を弄びながら、俺はじっと瀬名の顔を見つめた。やっぱり俺は舐められるよりも、瀬名の表情を堪能する方がクるようだ。
「ん……瀬名、舐め方エロい……」
「翔……なぁ、オナっていい……?」
「ええっ? 舐めてるだけなのに、興奮すんの?」
「するに……決まってんだろ」
瀬名はそう言って、ちょっと悔しそうな目つきで俺を見上げた。その顔がたまらなくかわいくて、俺は一瞬めまいを感じた。
「俺がするから、舐めててよ。俺、瀬名に舐められてるより、舐めてる時のお前の顔に興奮するんだ」
「は、はぁ!? マジかよ! やっぱ俺、下手!?」
「ううん、下手じゃない。けど、一生懸命舐めてるお前の表情の方がずーーっとエロいから」
「何だよそれ……ぁ、あ」
する、とジャージの中に手を挿し入れてみると、瀬名のペニスはすでにこれ以上ないってくらい硬くなってた。今日は緩めのボクサーパンツだから、そのまま調子に乗って瀬名のパンツの中にまで手を突っ込み、直接瀬名のそれを握り込む。
「……翔……はぁ……」
「濡れ濡れ。興奮しすぎだろ」
「だっ、て……久しぶりだし……ぁ」
「だよな。……俺も、ずっと瀬名に触りたかった」
「ぁ、あ。……イイ……泣きそ……」
ズボンの中で瀬名のペニスを扱いていると、瀬名はくてっと俺の身体に体重を預けてきた。そんな瀬名の肩を抱き、俺は手のひらの中で質量を増す瀬名のペニスを一心不乱に愛撫する。すると瀬名は、うっとりととろけるような目つきで俺を見上げた。
……あぁ、キスしたい……。
そう思った瞬間、瀬名の手が俺の首にするりと絡まり、ぐっと距離が縮まった。そして押し付けられた柔らかな感触が何なのか、俺は一瞬分からなかった。
「……へっ……!?」
「翔……っ、手、止めんなよ……!」
「瀬名、え、まじ……え? キスとか、え、いいの!?」
「いいに決まってんだろ……!! てか寸止めとか、ありえねぇ……ひどっ」
びっくりしすぎて手が止まってしまい、瀬名は思わぬ寸止めを食ってしまったらしい。俺は呆然と瀬名の顔を見つめて、今しがた俺の唇にくっついていたであろう細い唇をじっと見つめた。
「……瀬名って、誰かとキス……したことあんの?」
「えっ? ……ええと……」
「そりゃあるよな。……お前、モテるし」
「……ない」
「えっ!? ないの!? じゃあ今のファーストキス!?」
「だ、だ、だったら何だっつーんだよ!! そーだよ、ねぇよ!! チューもエッチもしたことねぇよ俺は!! お前のせいだぞ!!」
そう言って瀬名は身体を起こし、じろりと俺を睨みつけてきた。といっても、目は潤んでるしほっぺたは赤いしで、全然迫力ないから怖くないけど。
「翔のせい、だろ」
「……ご、ごめん……。俺がずるずる”練習”に誘ってたせいで、」
「そーじゃねぇよ!! ったくどこまでニブいんだよお前はっ!! 俺は……、中学んときから、お前のこと好きだったからだよ!!」
「へ……!?」
――俺のことが好きだった? しかも、中学の時から……!?
俺はその衝撃をまともに喰らい、本気でぐらっとめまいを感じた。
瀬名は頬を染めたまま怒ったような顔で小さくうつむき、がしがしと茶色い髪を掻いている。
「そうでもなきゃ……乳首舐めたいとか言わねーだろ普通。てっきりドン引きされて失恋決定って思ってたのに、お前……澄んだ目でOK出してきやがって……」
「……あ、うん……」
「俺があの日から、どんな気持ちでお前とエロいことしてたか……わかる? お前、真面目すぎんだよ。真面目に俺の相手してさ、地味にモテるくせに全然彼女作る気配も見せねーし。……だからずっと、押していいのか引いていいのかも分かんなくて……苦しくて」
「ご、ごめん……」
そう言って俺も俯くと、俺たちは向かい合って俯き合ってる格好になった。そうすると、あぐらをかいた瀬名の白い足首とふくらはぎがチラ見えして、俺はまた一層ドキドキしてしまった。
「俺も、さ……。いつ瀬名が、こんな関係をやめようって言い出すんだろうって、不安で不安でしょうがなかった。“練習”、続けてるうちにさ、本気でお前のことをかわいいって思うようになってたから、離れて行かれるのが怖かった。……ずっとこうしていたいって思ってたのに……それ、言い出せなくて」
つっかえつっかえそんなことを言う俺に呆れたのか、ふと、瀬名のため息が聞こえてくる。
「不安とか……そういうの、言ってくれればよかったのに。……何だよ、それって俺ら、両思いってことじゃん……」
「おう、確かに。うん……両思い、だな」
「なんだ……そーだったんだ」
瀬名は心底ほっとしたらしく、ようやく笑顔を見せてくれた。こうして笑う瀬名の顔を見るのは本当に久しぶりで、さっき乳首を舐められた時よりもずっとずっと、ドキドキした。
尖って見える表情も、笑ってるとすごく幼い。薄茶色の髪や銀色のピアスがキラキラ光ってるように見えるくらい、瀬名の笑顔はすごく眩しい。
俺はそっと瀬名の頬に手を伸ばし、後頭部を手のひらに包み込んだ。そしてゆっくりと自分の方に引き寄せて、今度は自分から、瀬名の唇にキスをする。
「……ん……」
「今度は俺の番。……瀬名のここ、舐めたい」
「うん……いーぜ……でも、もうちょっと、チューしたい」
「ん……」
そう言って、瀬名は両腕を伸ばして俺の首に手を回した。そんな風に甘えてもらえるなんて思ってもみなかったから、俺のテンションは急激に最高潮だ。
俺はそのまま瀬名をベッドに押し倒し、ぎこちないながらもその口内に舌を挿し入れてみた。何をどうしていいか分からなかったけど、瀬名の舌を求めて柔らかな粘膜を舌で愛撫し、角度を変えて唇をついばむ。すると、瀬名の舌が俺のそれに絡まって……。
――すげぇ、気持ちいい……。
「ん……ふっ……ん」
「瀬名……瀬名……」
「ァ……ふぅっ……ン、かける……」
瀬名は脚を開いて俺の身体を挟み込むような格好になり、ゆるゆると腰を揺らし始めた。下半身同士が密着し、否応なく互いの屹立の存在を感じてしまえば、俺の理性のネジ……完全に、ぶっとぶ。
「ぁ……っ、かけるっ……!!」
瀬名のシャツを捲り上げ、俺はピンク色の乳首にむしゃぶりついた。キスで潤んだ唇を押し付け、きつく吸い、わざと水音を立てて瀬名の小さな尖りを舐め上げる。
もう片方の乳首も放ってはおかない。手を使って薄い胸板を揉み、ツンと硬くなるそれを指先でもてあそぶ。指先で掻くように乳首を弄り、きつく摘んで引っ張って、同時にもう片方の乳首に歯を立てた。
「ァあんっ……! ん、ぁ……っ、ひぅ……っ!!」
「気持ち、いい?」
「……イイ……っ、イイ、ぁ、あん、んっ……!!」
「……はぁ……瀬名、ほんっとかわいい。……こんなんじゃ、もう、足りない……」
「ン、んっ……おれも、おれもっ……」
「なぁ、オナっていい? もう無理、出したい……」
「翔……」
瀬名の乳首を攻めながら制服のベルトを緩め始める俺の手を、瀬名がそっと掴んだ。
顔を上げて見下ろすと、色っぽく目をとろんとさせて呼吸を荒げている瀬名のエロい顔が、すぐそこにある。
――やばい、これは……。
じんじん疼く脳みそと下半身、そしてばくばくと暴れまくる心臓にさらに追い打ちをかけるようなセリフが、瀬名は艶めいた唇で囁いた。
「翔……挿れて、欲しいんだけど……」
「……え? い、挿れるって……」
「俺……ずっと……お前にヤられたくて……。自分でケツ、弄ったりしてて……」
「……マジ、かよ」
「こんなこと……冗談で言えるわけねーだろ! だから……挿れろよ! 翔とセックスしたいんだよ俺は!!」
「セッ……」
俺の中で、何かが完全にぶっ飛んだ。
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