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エピローグ
結局、俺は瀬名の家に泊まった。
いつおばさんたちが帰ってくるか分からないから、交代で風呂に入り、その後リビングでいちゃいちゃ。すると小一時間ほどして、おばさんたちが帰ってきた。ちなみに瀬名の両親は、同じ会社に勤めてるんだ。
俺は瀬名から慌てて離れて、「お、お邪魔してます!!」と直角に頭を下げる。すると酔ったおばさんは「もー、また遅くまでゲームしてたの? だめよぉ」と言い、運転手係でシラフのおじさんは、「もう遅いけど、泊まってく? 朝ごはん用のパン、いっぱい買ってきたから食べて行きなよ」とにこやかに声をかけてくれた。
昔から、こうして泊めてもらうことはけっこうあったから、おばさんたちも俺がいることには慣れたものだ。
瀬名の家は一階に駐車場があって、その階にある一部屋は瀬名の自室。リビングやキッチン、おばさんたちの部屋も二階だから、物音に気を使うこともあんまなくて、気が楽だ。俺たちは、眠くなるまでくっつきあって喋って、キスして、抜きあって……。すごく幸せな夜を過ごした。
俺はふと、俺が瀬名の部屋で寝てる時(布団は別だったけど)、瀬名がどんな気分でいたのだろうということを妄想して、ひとりで密かに身悶えた。
そして次の日の朝、俺たちは早朝の住宅地を歩いてるところ。何となく、ゆっくり並んで歩きたくて、自転車はあえて瀬名の家に置いてきた。
「おばさんたち、気づいてないかな」
「大丈夫だろ。家にお前がいたら、母さんが喜ぶだけだし」
「そぉか?」
「俺と違って礼儀正しくて、素直で、可愛いんだと。あとお前の顔も好きだってさ。おしゃれしたがる俺と違って、素朴で天然素材なのに、男らしくてかっこいいからって。かわいいかわいいってうるせーよ」
「……へぇ、変わってるな、おばさん」
「何言ってんだよ、お前はかっこいいよ。お、お……俺も……好きだし」
「えっ」
朝っぱらから、瀬名がデレた。
まさかこいつが俺に対してそんなことを思ってるなんてびっくりで、俺は数秒間きょとんとしてしまった。
すると瀬名は真っ赤になって「きょとんとすんなバカ!!」と喚き、げしげしと俺の尻を蹴り始める。
「いたっ、いててて、何だよもう」
「うるせー! 何でもねぇよバカっ!」
「何怒ってんだよ……。ふへっ、お前ほんとかわいいな」
「黙れバカ!」
「へへ、ごめんごめん」
瀬名と並んで歩いてるだけで、こんなにも楽しい。俺はにまにま緩んでしまう顔を引き締めることもなく、隣でぷりぷり怒っている瀬名の頭をぽんぽんと撫でた。すると瀬名は頬を染め、途端におとなしくなる。顔はムスッとしてるけど、照れてるのか丸わかりでめちゃくちゃかわいい
「あ、敬太」
「え? どこ?」
「前歩いてるの、敬太じゃん。俺ら、近所なんだ」
「あ、そうなんだ」
指差す方向を見て見ると、制服姿の霧島の背中が見えた。そしてその隣には、私服姿の小柄な少年が並んでいる。弟だろうか?
「おーい、敬太ぁ」
瀬名が手を上げて霧島を呼ぶと、霧島は顔に笑顔を残したまま振り返り、瀬名に向かって手を上げた。そしてふと俺を見て、霧島はどことなく満足げな表情を浮かべている。
「霧島にも、感謝しなくちゃだな」
「え、何で? やっぱお前らなんかあんの?」
「何もないよ。行こうぜ」
「何だよ気になるなぁ。あん時何喋ってたんだよ」
「何でもないって」
「気になるなぁ」
疑わしげな目つきで俺を見上げる瀬名の目線をまっすぐに受け止めると、瀬名は細い唇をきゅっと引き結び、照れくさそうに笑った。
そして俺たちは、霧島に合流するべく、少し歩調を速めて朝の遊歩道を歩いた。
『舐めるだけじゃ、もうたりない!』・ 終
最後まで読んでくださってありがとうございます!
この後に、瀬名目線の番外編をアップします。よろしければお立ち寄りくださいませ。
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