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ムラムラしすぎてつらいんですけど

「殿田、そこまででいいよ。ありがとう。じゃあ次は誰に読んでもらおうかな……。……霧島、眠そうだな。眠気覚ましに次、読んで」 「……えっ? 俺?」 「お前だよ。まさか目を開けたまま寝てたんじゃないだろうな」 「ね、寝てねぇし。……えーと」 「ったくお前はいつもいつも……。一条、どこからか教えてやってくれ」 「はい」  完全に油断していたところを水原に指名されて、地味に焦ってる敬太に、翔は小声で「八六ページの四行目からだよ」と教えてやってる。敬太は軽く頬を掻きながら立ち上がり、教科書の続きを音読し始めた。  最近席替えがあって、俺は翔の斜め後ろになった。勉強に勤しんでる翔を思う存分眺めることのできるベストポジションだ。ちなみに弓月は俺の前。つまり俺の前には、敬太、翔、弓月が一直線に並んでるってこと。  時折頬杖をついたりはするけど、翔の授業態度は極めて真面目だ。ノートの上にシャープペンシルを走らせながら黒板を見上げる翔の姿は、なかなかどうしてそそるものがある。日焼けしたうなじはセクシーだし、シャツの下の筋肉質な背中とかガン見してたら透けて見えそうだし、椅子の上に乗ってる締まった尻にもそわそわする……。  男っぽくて骨ばった手に握られた黒いシャーペンでさえ、どういうわけかエロく見える始末で……うーん。集中できねー。  そんなこんなでそわそわしてたら、いつのまにか授業は終わってた。日直の号令が響く中、ぎょっとして黒板の方を向くと、水原がちょっと呆れたような顔で俺を手招きしてるのが見えた。 「……何ですか」 「まったく霧島といいお前といい、ぼうっとしすぎだ。どうしたんだよ」 「えっ!? い、いや……あの、部長になって張り切りすぎて、ちょっと疲れてるっつーか……なんつーか……」 「なるほどね。……まぁ、確かに、お前はよくやってくれてるよ。見かけによらず真面目だよね、桐生は」 「はぁ……ありがとうございます。……ってか見かけによらずとか余計だろ先生」 「ははっ、ごめんごめん」  水原はそう言って、優しい顔に笑みを浮かべた。そして手にしていたファイルから一枚のプリントを取り出して、俺に渡す。 「何ですか?」 「年末年始のスケジュールだよ。コピーして、みんなに配っておいてくれるかな。枝幸(えさし)が今日は休みなんだ」 「あ、はい。分かりました」  枝幸というのは、男子水泳部のマネージャー(男)。風邪で休んでるらしい。  水原は俺に軽く手を上げてから、きびきびした足取りで教室を出て行った。ちなみに、今から昼休み。あー、腹減った。  プリントを手に席に戻ると、翔と敬太と弓月が楽しそうに喋ってる。翔はちょっと前まで敬太のことを苦手だと言っていたけど、最近すげー仲がいい。いっときは二人の急接近に妙な勘繰りをしていた俺だが、翔と両思いになってからは、そういうの全然気にならなくなった。こうやって四人で仲良くできんのは、純粋に嬉しいしな。 「水原、何だって?」 と、翔がおっとりと俺に声をかけてきた。こうやって教室で喋ってる時の翔は、すげぇ爽やかで穏やかで、どっしり落ち着いた雰囲気を醸し出してる。なんつーか、ザ・サッカー部キャプテンって感じっつーか……。  ――エッチしてる時はあんななのに……何でこんなに爽やかなんだこいつ。何だよにっこり優しく微笑みかけてくれちゃったりしてさぁ、俺一人でムラムラしてんのバカみてーだろ……。    何となく悔しくなって、俺は「コピー頼まれただけ」と素っ気なく答えた。すると弓月が後ろ向きに椅子に腰掛け、俺の手からプリントを取る。 「何だよ瀬名ぁ、きげんわりーじゃん。……あ! 年末年始、珍しくがっつり休みじゃん! もっとお前も喜べって!」 「……べっつに不機嫌とかじゃねーし。コピーがめんどいだけ」 「飯食う前に行くか? 俺も印刷室、用事あるし」 と、翔がそんなことを言いながら立ち上がる。翔と二人きりになれるチャンスかも……!! と、俺はついついどぎまぎしたけど、そんな自分が恥ずかしくて、つんと翔から目をそらした。 「いーよ、一人で行ってくる。ついでにパン買ってくるし」 「あ、じゃー俺にもコロッケパン買ってきて」 と、敬太。 「はいはい部長!! 俺はぁ、俺はぁ……えーと、あんぱん食いたい!!」 と、弓月。 「うっせーな、部長パシッてんじゃねーよ! パンが食いたきゃ自分で行け!」 「やっぱ機嫌わりーじゃんかよー」 「きっと腹減ってんだろ。ほら、行こうぜ」  翔はそう言って、椅子の背もたれに頬杖をついてぼやいている弓月を宥めつつ、俺の二の腕を軽く掴んで歩き出した。ジャケットとセーターごしでも、翔の力強い指の感触にどきどきする。何か文句を言ってやろうと思ってたけど、何となくそんな気も失せてしまって、俺は渋々印刷室に向かって歩き出した。 「つうか、翔が印刷室に用事って、なに?」 「んー、印刷室に用事っていうか……」 「何だよ」  職員室の隣にある印刷室に向かうのかと思いきや、翔は俺の手首を掴んで回れ右をして、そのまま階段を登り始めた。三年生の教室のある階を超えたさらに上、屋上に向かう人気のない階段を登る翔の背中に、俺は戸惑いながら声をかける。 「おい! 屋上は立ち入り禁止だろ! どこ行くんだよ!」  くすんだ鉄の扉の前まで来て、翔はようやく足を止めた。扉に嵌った汚れた窓ガラスから差し込む冬の日差しに照らされた埃っぽい空間で、翔は俺に向き直る。  そしていきなり、ぎゅうっと強く抱きしめられた。 「……!? 翔……っ? ん、んっ……」  そんでもって、ものすげー熱いキス、された。 「ちょっ……何やってんだよお前っ……」 「ごめん。瀬名に触りたくて触りたくて……もう限界」 「へっ!? 何言ってんだバカ!! こんなとこで……、ぁ……っ」 「ちょっとだけだから……」 「んー……っ、ばかかおまえっ……ン」    きつく抱き寄せられて、密着する身体が熱くなる。いつになく切羽詰まった感じで俺の口の中に舌を挿れてくる翔の動きに、俺はあっという間に骨抜きにされていた。  俺は、上顎や頬の裏を舌で擦られるのがすげー好き。ジャケットの下に入り込んで来た翔の手のひらに背中を撫でられて、やわやわ尻を揉まれながらディープキスしてたら……やばいってこれは。これ、エッチしたくなるやつ……!! 「……ん、ん……ハァっ……あ……やめろってば!! なんなんだよ、急に……っ」 「……瀬名見てると、なんか……エロいことばっか考えちゃうようになって……困ってんだけど」 「へぇっ!?」  ――あんな爽やかなツラしてエロいこと考えてますってか!? どんだけ器用なんだこの野郎!!!  って言いたかったけど、すぐにまた唇を塞がれて、喘がされる。  時間もねーしこんなとこで本番するわけにもいかねーから我慢するしかねーけど……俺だって、もっと翔に触りたかったんだ。こいつにばっかり主導権握られんのは何となく腑に落ちない。  俺は自分を奮い立たせて翔から身体を離すと、屋上のドアに翔を押し付けて、ちょっと呼吸を整えた。 「エロいことしたいなら、俺がしてやるよ。ここんとこ、いっつも俺、お前にアンアン言わされっぱなしだし!」 「え、何? 気にしてたのか?」 「き、き、気にしてねーけど!! とにかく、時間もねーんだ。そこでおとなしくしてろ」  俺は翔のネクタイを緩めてシャツをガッとめくり上げると、逞しい胸筋と腹筋を露わにしてやった。  翔は俺の乳首をエロいと言うが、翔のおっぱいも相当エロいと俺は思う。ここ最近また一段と逞しさ増した翔の胸筋はしっかりと盛り上がっていて男らしいが、乳首はけっこう小さくて、この見事な胸筋を飾るにはあまりに頼りない。そういうところが、俺のおっぱい愛を絶妙にくすぐるのだ。 「最近、全然舐めさせてくんねーじゃん。……たまにはいいだろ?」 「う、うん……いいけど」 「なんで不服げな顔してんだよ!」 「俺はお前の舐めたかったのに」 「いっつも舐めてんだろーがっ! いいから、おとなしくしてろ」 「はいはい」  翔はそう言って、自分のシャツの裾を持って俺を見下ろした。……クッソ、何だその余裕ブッこいたツラは!!   目にもの見せてやんぜ……と鼻息も荒く翔の乳首に舌を伸ばし、俺は久方ぶりの翔のおっぱいを口に含んだ。 「……ん……」  壁ドンするような格好で上半身を屈めて、俺は翔の乳首に舌を這わせた。なんか、前より舐めやすいな……と思ったら、どうもこいつはまた身長が伸びたらしい。スクスク素直にまっすぐでっかくなりやがって……と、若干悔しい気持ちを抱えつつ、俺は目を閉じて翔の乳首を舐めまわした。 「……瀬名」 「ん……?」 「くすぐったい」 「うるせぇ」  翔のおっぱいは、力を入れていなければ適度な弾力を保っていて、揉み心地がいい。俺は片方のおっぱいを揉み上げながら、舌を上下に細かく動かして乳首を舐めた。そして乳輪を辿るようにゆっくり舌先を動かすと、翔は不意に「んんっ……」と色っぽい声を漏らし、乳首がつんと硬くしこった。  ――……やべーってその声。どうしよう……俺が興奮してきた……。  じわじわと股間に集まる熱は、確固たる存在感をもちはじめている。俺は太ももをモゾつかせつつ翔の股間を見下ろして見たが、翔のは……んー……勃ってねぇっぽいな。くそぉ……結局俺ばっか、俺ばっか興奮してんじゃねーかよ! ばかみてーじゃん!!  いっそのことフェラでもしてやろうかと思ったその時、のんびりとした予鈴のチャイムが鳴り響いた。俺たちははっとして、思わず顔を見合わせる。 「……終わっちゃったな、昼休み」 「はぁ……くそっ……すっげ不完全燃焼なんだけど……」 「腹も減ったし」 「あああ! 昼飯食ってねーよ! どーしてくれんだよバカ!」 「ごめんごめん。急いで買って帰ってさ、すぐ食おう! パン一個くらいなら食えるだろ」 「ったく……何なんだよお前はっ!」 「ごめんって。……はぁ、でも、早く続きがしたいなぁ」 「うっ……」  身だしなみを整えつつ歩きながら、翔はいつになく甘えたような目つきで俺を見た。  ……めっちゃくちゃ可愛くて、勃った。

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