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第3話

 翌朝、泰彰が教室へ入ると、すでに尚がいた。  席に掛け、外を眺めている。 「おはよう!」 「……」  泰彰が挨拶をしても、尚は会釈をするだけだ。  そんな彼に、泰彰は腹を立てない。  陰キャと笑ったりしない。 「可哀想なんだよな」  昼休み、泰彰は、そう令司にこぼした。 「相葉が?」 「うん」  尚は、両親に虐待を受けて育った人間だ。  命の危険が、という所まで来て保護されたという。 「やっと地獄から抜け出せたのに、学校で独りぼっちだろ?」  そこで、と泰彰は声をひそめた。 「あの薬で、相葉の心を溶かしてあげられないか」 「トラウマがそう簡単に消えるとは思えないけど、放課後に彼も誘ってみるか」  泰彰が尚に目をやると、彼はもう昼食を終えて窓の外を見ていた。 

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