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第4話
放課後、泰彰と令司は尚を理科室へ招待した。
「それで僕は、何をすればいいの」
抑揚のない声で、尚は言う。
両親から、酷い目に遭わされてきたのだ。
感情の欠けた表情や声は、仕方のない事だった。
「令司が妙な薬を作ったから、その使い道を一緒に考えて欲しいんだ」
「どんな物質も溶かす薬だ!」
令司は、デスクに置いたボールペンに薬を注いだ。
煙になって消えていくボールペン。
尚は、少しだけ目を見開いた。
「宿題でもしながら、のんびり考えよう」
令司がそう言って、一旦ビーカーを置いた。
三人はデスクに座り、ノートを広げた。
だが、尚はペンを取ろうともしない。
デスクの上を眺めるだけだ。
「どうした?」
「解らないんだ、僕。頭、悪いから」
おそらく、学校にも行かせてもらえなかったのだろう。
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