9 / 17
第9話
放課後、三人は再び理科室に集まっていた。
例の薬の使い道を探るためだ。
「原発の廃炉に、かけたらどうだろ」
「放射性物質との相性は、未検証なんだ。リスクがある」
「産業廃棄物は?」
「どんな有害物質が潜んでいるか解らないんだ。危険だから却下」
泰彰は口を尖らせた。
「使えそうで、全然使えないじゃん」
そこへ、尚が囁いた。
「僕に」
「え?」
「僕に、かけてくれないかな。その薬」
何て事言うんだよ、と泰彰は叫んだ。
「溶けて消えちゃうんだぞ!?」
だからだよ、と尚は言う。
「僕、生きてきた中で、今が一番幸せなんだ」
学校に行けるし、美味しいお弁当やお菓子も食べた。
そして何より、友達ができた。
「これ以上の幸せは、この先無いと思うんだ。一番幸せな時に、消えて無くなりたいんだ」
ともだちにシェアしよう!