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第15話
何でそこでキスしなかったんだよ、とは電話口の令司の言葉だ。
「俺も考えたけど」
焦ると、いけない気がして。
ようやくほころんだ固い蕾が、咲く前に散ってしまいそうな気がして。
「尚を考えると、それで正解かな」
「それだけ、大事だってこと。尚が」
二人、それには同調して電話を終えた。
それから1か月近く過ぎた。
令司の薬の使い道は、決まらないままだ。
だが、泰彰と尚との距離は縮まった。
ようやく、手をつなぐところまで来たのだ!
これは大きな進歩だった。
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